アイロンワークとイセ
アイロンワークとイセ
「アイロンワーク」と「イセ」という言葉はスーツを語る上でよく出る言葉だがあまり正確には理解されていない。
今回は「アイロンワーク」と「イセ」の紹介。
スポンジング(地直し)
実は生地は歪みが生じている。特にインポート生地は縫製に入る前に、その歪みを修正してからスーツは仕立ての工程に入らなくてはならない。
特に日本の夏は高温、多湿であるからこの工程を省くとジャケットの前身頃のぶくつき、捻じれの原因となる。
スポンジングは蒸気と熱を当て地を合わせる工程を指す。
スポンジング後、一週間ほどを生地を寝かせる必要がある。
現在では、納期短縮、接着芯の使用を理由に、この工程を省く場合が多い。
アイロンワーク
ウール、カシミヤ、コットン、麻生地は伸縮性がある。
アイロンワークとは、その性質をさらに高めるためアイロンの蒸気、熱を利用する。
工程を流れる間に何度も、何度もこの工程を繰り返すことによって胸に立体感が生まれる。
この工程のなされていないジャケットを着た場合、腰の部分にだぼつきがでる。
しかし、アイロンワークの施されたジャケットは自然な腰のくびれを生む。
イセ
イセは袖(アームホールと袖の接合部)、後ろ身頃(肩線と後ろ身頃の接合部)で多く用いられる。
アームホールに比べ稼働域の大きい袖側の接合部の生地を大きくとる。そうすると余りが出る。この余りを「イセ」という。
後ろ身頃も通常人間は背中の方が稼働域が大きい。
イセ処理はパターンオーダーでも施されいる。
しかし、マシーンで行うのでハンド行った場合より「イセ」が少ないので動きにくくなる。
フルオーダーとパターンオーダーの着心地はこの処理の違いにある。
上記の生地の性質を利用し、アイロンでイセを処理すると、波打った部分は消え、接合部は綺麗になる。
とくに袖山の上がった「ロープド」は、イセをハンドで処理しないと縫製は不可能である。
(イセをあえて残した「雨降らし袖」)
(より多くのイセが必要な「ロープド」)
ポイント
今日主流の袖山が盛り上がらない「ナチュラル」「割り袖」はブルックスブラザーズが当時、仕立て服から既製量産化で簡略化を図るためにとりいれたといわれている。
スーツは本来「ロープド」か「雨降らし袖」であった。
・イセの多い動きやすいスーツを選ぶなら「ロープド」!
・「ロープド」はハンドの証!
・あえてイセ処理の行わない「雨降らし袖」もナポリスタイルには最適