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2012年5月

オーダースーツとスエードの靴①

 せっかくオーダースーツを作られるのなら靴にもこだわりたいですよね。
 
 
 
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(シングルモンクのスエード)
 
 
 
 靴はオーダースーツ、シャツに劣らず重要なアイテムです。
 
 以外に使い回しの利く靴があります。それはスエードの靴です。
 
 日本人はなぜかスエードの靴を秋冬ものとして春夏には敬遠しがちですね。世界的に見てスエードは秋冬に限らず通年で使い回せるアイテムとして認知されています。
 
 ビジネス使いには避けた方がいいと言われる場合もあります。確かに表革の靴よりはカジュアルの印象を与えますがルール上はビジネスシーン、スーツに合わせても大丈夫です。銀行員の方などのお堅い職業の方は避けられた方が無難かもしれません。
 
 その柔らかな印象は少し遊び心をスーツスタイルに持たせたいとき、ジャケパンとの相性は最高です。
 
 スエードの良さは手入れの簡単さもあります。ブラシで時折毛並みを揃えてやるだけでいいんです。梅雨時のような雨降りの時には大変便利です。表側の靴のように靴磨きの手間もほとんどありません。
 
 また、写真の靴の形は「シングルモンク」といいます。シングルとはバックル(甲を抑えるベルト)が一つという意味です。二つあるものは「ダブルモンク」といいます。
 
 「モンク」というのは修道士の意味です。修道士の履いていた靴にこのようなバックルが施されていたので、ベルトで甲を抑える靴は「モンクストラップ」と呼ばれるようになりました。「モンク」というのは「モンクストラップ」の略です。
 
 本来、スーツに合わせる革靴は紐靴でなくてはいけませんが、「モンク」は例外で認められています。
 
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(ダブルモンク)

ジャケット生地とスーツ生地のちがい

 お客様に時折、ジャケット生地でオーダースーツをと注文を受けたりします。
 
 ジャケット生地はスーツ生地と違い、打ち込みが弱い(生地の糸の本数の密度の薄い)ものが多く、スーツにしたらパンツの膝が抜ける場合があります。また、耐久性の面でもあまりお勧めはできません。
 
 ジャケットはパンツに比べ摩耗する箇所が少なく多くの場合は弱い生地です。
 
 カシミヤの生地が例外を除いてコートやジャケット以外に使われることがほとんどないのは摩耗を避けるためです。特に細い繊維の生地はすぐ毛玉ができ、擦り切れます。
 
 中にはスーツで仕立てることも可能な生地もありますのでその都度、御相談していただけたらと思います。
 
 スーツにしても大丈夫な生地の見分け方は斜め方向に引っ張ってよく伸びる生地はパンツにすると危険です。スーツ生地とジャケット生地で比べてみるとその伸びの違いがよくわかります。(素材にもよりますが)
 
 逆にパンツ生地でオーダースーツをお作りになることは問題ありません。
 
 
 
 余談なんですが先日、イタリアの生地とイギリスの生地とでは圧倒的にイタリアの生地の方がデザイン性があって色使いが鮮やかな理由はなんでなのかと業者仲間と話していました。
 
 「イタリア人は女を口説くために着飾るんだよ。」と言われてしまいました。(笑)
 
 昔、本田宗一郎が「この世に女がいなかったら俺は麻袋を着て過ごす。」と言っていたとの話を思い出しました。名誉工学博士を大学から送られた時も社員から「工学博士」ではなく「エロ博士」といわれた人間らしい本田さんらしい言葉ですね。
 
 (そのスケベ心からはわかりませんが)本田さんも自動車をただ乗る道具としてではなくデザイン性にも大変こだわったそうです。
 
 スーツもただ単なる仕事着ではなくデザインを楽しむ余裕も欲しいものですね。
 
 本田さんにまつわるエピソードをおひとつ。ある時、来賓客がトイレで入れ歯を落としたそうです。当時はくみ取り式で、本田さんはその入れ歯を探し当て見つけ出してお客さんに渡したそうです。お客様はさぞ、対処に苦慮したことでしょうが、経営者として語られることが多い方なんですが、なんだか接客する人間として自分も学ぶところの多い人だったようです。(笑)

トレンチコート、アルスターコート(オーダースーツに合わせるコート)

 季節外れなんですがなんだか、お客様にコートについての質問を頂いたので少しコートについてご紹介させていただきます。
 
 
 
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(トレンチコートを着た男性)
 
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(前列左のチャーチルがアルスターコートを着ています。中央のルーズベルトはステンカラー?)
 
 
 
 スーツに合わせるコートと言えば一般的にはチェスターコート、ステンカラー、トレンチコートですね。
 
 トレンチコートは以前、ブログでご紹介させていただいたように塹壕戦に向く兵装として生まれたものです。
 
以前のブログ リンク先http://sartoriacorvo.com/?p=523
 
 
 
 日本ではあまり見かけないアルスターコートは実は来季の注目の的なんです。
 
 チャーチル元首相の着ているコートとトレンチコートの形が似ていませんか?トレンチコートのもとになったのはこの「アルスターコート」なんです。
 
 アルスターコートは北アイルランドが発祥とも言われています。
 
 特徴は大きな襟です。エレガントな印象ですね。この襟の形を「アルスターカラー」という場合もあります。
 
 優れた防寒性、デザイン性で20世紀初期のイギリスで流行したそうです。日本でも昭和初期に流行したそうです。
 
 コートに関してイギリス発祥の物がおおくイタリア発祥の物はあまり聞きませんね。スーツも元はイギリス発祥なんですがスーツのような独自の発展はなかったようです。気候の関係かもしれませんね。

ストライプ(オーダースーツの生地の選び方)

 スーツやジャケットの生地といえば無地、ストライプかチェックが一般的です。
 
 一言にスーツの柄と言ってもストライプにもいくつか種類があり、チェックにも種類があり印象を大きく変えます。
 
 一般に無地は最も無難なものとして扱われます。特に海外では濃紺の無地はフォーマルなものとして扱われます。
 
 ちなみに高度成長期は日本のサラリーマンがグレーの無地のスーツを好んできていたことから「溝鼠」と海外の方から揶揄されていたそうですね。お客様に教えていただきました。
 
 ストライプは無地よりもカジュアルにはなります。時折、ビジネス使いに大丈夫かと気にされる方もいますが会社の社風にもよりますが、問題ありません。
 
 アメリカなどのエリート銀行員は好んではっきりした縦じまに縦じま同士の幅1cmほどのストライプのスーツを着ます。それから「バンカーストライプ」といったりします。相手に信頼感、知的な印象を与える柄とも言われています。
 
 現在の流行で言うとこの「バンカーストライプ」が一般的ですね。流行と言っても昔からある柄なので廃れることはなく今後もあり続ける柄です。
 
 ストライプははっきりすればするほど間隔の幅が広くなると男性的な力強い印象になります。反面、カジュアルな印象にもなり着る場面を選びます。
 
 ちなみに体型にも幅を気をつけなくてはなりません。100kgを超える人と50kgの人とでは体の横幅が違います。同じ間隔のストライプを乗せてみても印象は変わってきます。
 
 雑誌を見てこんな柄のスーツをと注文されても出来上がると印象がちがうのはそうゆうことです。

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(ボタンフライ)
 
 
 
 最近、ちょっと変わったオーダーを頂きました。「ボタンフライにできますか?」と。
 
 昔はチャックがなかった時代は写真(ジーンズに施されたものですが)のようにボタンで前を留めていました。
 
 現在でも老舗テーラー(特に英国の仕立屋に多いような印象があります)のオーダースーツなどに時折クラシックなディテールとしてスーツに施されたりします。
 
 スーツやジャケットに合わせるスラックスなどよりもジーンズがこの仕様になっていることが多いですね。
 
 今は使い勝手のいいチャックが一般的ですが、クラシックな雰囲気を楽しみたい方は尾錠、サスペンダーボタンと併せて仕立ててみるといいでしょう。こうしたディテールに拘れるのはオーダースーツならではですね。
 
 ただし、馴れてないと掛け損なったり、閉め忘れることがあるので注意が必要です。(笑)昔の日本軍の将校がシベリア出兵の際にボタンを閉め忘れいて寒さで凍傷で男性にとって一番大事なものを切断するという笑うに笑えない話もあります。
 
 
 
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(サスペンダーをした男性)
 
 
 ちなみにサスペンダーについても少し。
 
 サスペンダーは最近、注目を浴びています。その理由は英国調の流れです。サスペンダーは英国紳士のシンボルのようなものですね。
 
 もしサスペンダーをされるのなら股上、後股上を深めにし、ウェストにいつもよりゆとりを持たせるといいでしょう。
 
 肩はこるのですが、、パンツを持ち上げるサスペンダーはパンツのラインを綺麗に見せる効果がありお勧めです。
 
 サスペンダーは人前で見せてはいけないというルールがあるのでジャケットを着ていなくてはいけませんので秋冬のスーツ、パンツにお勧めです。
 
 昔はスリーピースにはサスペンダーをというルールはありましたが今はベルトでもいいようです。
 
 ベルトのバックル(金具の部分)でジャケットのお腹が膨れるのが嫌だという方はどんな時でもサスペンダーをされます。

古い型と伝統的な型

 オーダースーツを作られる上で生地や縫製も大事ですが型、シルエットも重要で欠かせませんね。
 
 Corvoの型紙は正統派で古いといえば古い型です。
 
 具体的にどういった型が古く、どういった型が新しいのかについて説明します。
 
 まずはアパレル界(スーツ業界)に置ける古いの定義と伝統的(正統派)の違いを説明しなくてはなりません。
 
 アパレルの古いのは流行に遅れたもののことを指します。
 
 たとえばバブル期の大き目で肩幅の大きいジャケットは当時は流行の最先端でした。最近では三つ釦の、タイト目で着丈の短く襟巾の細いスーツ。アパレル界では流行に乗ったものを今日的といいます。
 
 流行に乗ったものは当然、流行り廃りがあります。現在、バブル期のようなスーツを着た方はほとんどいませんよね。
 
 細い襟巾も現在はだいぶ少なくなってきましたね。一時期はホストのようなスーツをビジネスマンが着てましたね。
 
 多少は時代ごとに変化はありますが伝統的とは古くからある、正統な物を指します。(伝統は時代の連続の中で存在しますから、時代の影響は受けます。)
 
 イタリアのスーツというのは(特に南部)、ブリティッシュの老舗テーラー、老舗ブランドスーツの型というのはあまり変化がありません。
 
 たとえば五十年近く前に公開されたゴッドファーザーの登場人物のスーツは現在の感覚で見てみても廃れ、古臭いという印象を覚える方はごく少数だと思います。
 
 
 
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 ゴッドファーザーはイタリアのシチリアのマフィアの話で登場人物の大半が南部イタリアの伝統的な形のスーツを着ていて、今なおスーツ好きの方には高い人気があります。
 
 今の流行は伝統的スタイルに集約しつつあるようです。数年前までのカジュアル化に対する大きな反発のようにも感じます。
 
 ちなみにアパレル界は高価格帯のブランドになればなるほど型も伝統的になる傾向にあります。それは買い替えが安価の物より容易ではないので長く使えるようにという意味合いがあるようです。
 
 また不景気になると使い回しの利く伝統的な型、色合いの被服が売れるようになるそうです。現在のスーツの伝統回帰もそのような事情があるかもしれませんね。
 
 特に女性服にその傾向が強いようです。女性服は流行が紳士服より大きく、一着あたりに縫製にお金を掛けるより一着当たりの単価を抑え数を買ってもらう意味合いがあるようです。
 
 デザインブランドのスーツもその傾向がありますね。アルマーニ、ボスなどの二十万前後のスーツと老舗テーラーのスーツとの縫製は雲泥の差があります。

ネクタイについて

 少し前まで細いナロータイがトレンドでしたね。それに併せて襟巾の細いスーツ、襟の小さいシャツが多く見受けられました。
 
 ネクタイの幅は7~9cmが一般的でそれよりも細い物をナロータイといいます。
 
 ネクタイを選ぶ際はジャケットの襟の大きさに合わせるとおさまりがよくなります。細い襟の物にはナロータイ、巾広の物には一般的なもの、太めの物がよくあいます。
 
 最近のトレンドは巾広の襟のジャケット、スーツ、襟の大き目のシャツですからネクタイも太くなっていますね。
 
 ちなみにナロータイは顔が小さい方でないと顔が大きく見えるので注意が必要です。(笑)
 
 ところでネクタイの起源を御存知ですか?
 
 クロアチアの兵士が首に巻いていたスカーフが起源という説が一般的ですね。彼らの恋人、妻、家族が無事を祈って贈ったといわれています。また、兵士がスカーフを巻くスタイルも広く一般的になり第一次世界大戦までそのスタイルは広く継承されます。
 
 もとは兵装ですから部隊の柄によって識別に使われ、今でも柄によって帰属す組織、集団(会社、スポーツの選手団、サークルなど)を表すこともあります。
 
 今のような形のネクタイになったのは19世紀頃のイギリスと言われています。

オーダースーツを知る~ポケット位置~

 胸ポッケト位置なんですが、5,6年前のスーツに比べ下がってきています。
 
 詳しい方なら、その当時はクラシコイタリア全盛で低くても良いような気がするでしょう。
 
 もともと、イタリアのスーツはイギリスのものより2,3cm低めの場合が多いです。 イタリア人はチーフを挿す際に2,3cm、イギリス人より多めに出すからとも聞いたことがありますが低めです。
 
 ポケット位置は着丈を基準に三等分した位置にそれぞれ胸ポケット、腰ポケットとなります。それより高い位置にあれば高めといいます。
 
 なぜ5,6年前のスーツはポケット位置が高かったと言いますと三つボタンのスーツが全盛でした。
 
 ボタンをかける位置が高かったので重心を高めにするためにバランスをあわせるために高めに設定されていました。

オーダースーツの流行~着丈~

 世界的に見ても現在は着丈は短めのものが流行だとのこと。
 
 細い襟と短い丈、細身のパンツは以前のスーツのトレンドでしたが襟巾太目、太目のパンツが今のトレンドになりつつあるようです。
 
 一般にブリティッシュ調のスーツは長いと言われますが、様々なスーツを見てきましたが個人的は国ごとによって違いはないように感じました。1930年代は短めのものがイギリスで流行したそうですから、時代によるところが大きいと感じます。
 
 着丈の基準はお尻が隠れる程度、第七頚椎(背中側の首の付け根の骨)からかかとまでの半分、(身長-24cm)÷2、親指の第一関節付近と言われたりもします。
 
 ちなみに私は胴長なので基準どおりに作るとお尻が丸出しになってしまいます。(笑)実際には個人の体型と全体のバランスを元に決めるのが良いでしょう。
 
 バランスをつかむコツは鏡から4メートルほど離れてみると良いでしょう。あまり近くで見ていると全体のバランスをつかめません。
 
 服飾評論家の落合正勝氏は重めの生地のほうが長めの丈があうともおっしゃっていました。また、恰幅のいい方は長め、細身の方は短めがバランスがいい気がします。

Corvoのオーダースーツの型の特徴

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 格好いいでしょう?(笑)型紙を引いたのは自分ではありませんがお客様に自信をもってお勧めできるシルエットです。
 
 Corvoの型紙は十年近く前にクラシコイタリアのスーツを縫製工場のパタンナーの方々が研究を重ね作られたものなんです。時には市価、数十万円もするようなスーツをばらしたりしながら。
 
 クラシコイタリアは長い期間を経て成熟した、伝統的イタリアスタイルなので現在の感覚で見ても古さを感じさせません。
 
 イタリアを代表するブランドもおおよそこの形を継承しています。
 
 主な特徴としては高いゴージ、広い襟巾、高い位置の自然な腰の絞りです。型を口頭、文字で表現するなんて野暮ですね。「見て感じてください!」(笑)
 
 また、腰の絞りはお客様の体型、要望で変更させていただきます。最近は少しシワが出るぐらいの絞り目が流行です。それもブリティッシュ調の流れからでしょう。
 

 

 細々したところでは袖先から4センチのところに第一釦があります。イタリアのスーツはイギリスのスーツに比べ袖先から離れた場所に釦が付くそうです。理由は分かりません。
 
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