2016年4月
オリジナルバンチについて⑤厳選生地について(全7回)
当店オリジナルバンチの60種類の取り扱いがありますが、そのうち半数はイタリア生地のご用意となります。
Corvo厳選生地ということで今回はブランド名は控えさせていただきますが、前回ご紹介のホーランドシェリーと同様に力を入れたのがこちらのイタリア生地です。
高級生地の名産地、イタリア北部のピエモンテ州ビエラ市で創業した老舗ミルで、イタリア生地らしい柔らかな風合いと美しいドレープが特徴的です。
ちなみにロロピアーナやエルメネジルドゼニアが創業した地としても有名な町で、 アルプス山脈のふもとに位置し、良質な水に恵まれた地域ですので、 繊維産業が自然と発展していったのかもしれません。
そして、当店オリジナルバンチで扱う生地もビエラ地方の老舗ブランドをはじめ、スーパー110s~140sの上質なウーステッドを使用した生地を中心にチョイスしております。
細い原毛を使用するのは、Corvoのアイコン「奉文」(ともゆき)との相性もよく、脇にしっかりと噛んだアームホールからウエストラインにかけてのドレープが美しい曲線を描きケマワシへと落ちていく、このスタイルは柔らかな風合いのイタリア生地を用いることによって一層映えるからです。
こちらの生地はイタリアでは老舗中の老舗としてキートンやブリオーニといった高級メゾンからの信頼も厚く、 長期に渡り開発から製造までを共同で行っていることからもこのブランドの技術力の高さが窺えます。
温故知新というように伝統的な技術と先進のテクノロジーを融合させた手法は、イギリス生地では見ることのできない イタリア生地独特の風合いが特徴です。中でもおすすめのマイクロチェックの生地はイギリス地のような単調なチェック柄ではなく、光の陰影によって色味が少し変わり高貴で上品な印象となっております。
次回は、当店オリジナルバンチよりお選びいただいた生地の制作事例です。
オーダースーツCorvo
オリジナルバンチ紹介④厳選生地(全7回)
本来はオリジナルバンチに集められた生地ブランドは伏せたいのですが、どうしても気になるというお客様のために一例を。
ロンドンのメイフェア地区にある紳士服店が集中しているファッションストリート、「サヴィルロウ」は紳士服の始まりともいわれるこの通りには、古くはナポレオン三世やウィンストン・チャーチル、ハリウッドを代表する俳優など、一流を知る顧客から絶大な支持を得ていることでも有名です。
http://gqjapan.jp/fashion/wardrobe/20151103/opinionより
王室の方々からも支持されているこのサヴィルロウの名店から絶大な支持を受けているのが、世界屈指のマーチャント(生地商社)「ホーランドシェリー」社です。
ドブクロス低速織機にてじっくりと織られた生地が有名で、最新の高速織機では出すことのできない柔らかな風合いと弾力性に優れております。
季節毎のコレクションも豊富で、諸説ありますが、バンチブックを使った販売方法を初めて用いたのもホーランドシェリー社とも言われております。
そしてcorvoのオリジナルバンチのまず初めに登場するのがこのホーランドシェリーです。
しっかりと打ち込まれた生地は英国生地ならではの耐久性がありハードなビジネスユースに耐えます。スーパー140sの極細の原毛を使うことで美しい光沢を纏います。
ビジネスユースを意識したオルタネートストライプ、グレー生地などバリエーション豊富なのですが、特におすすめは大柄のチョークストライプは、corvoのアイコンとなるモデル「奉文」(ともゆき)と相性がよく、英国の伝統的な意匠を肌で感じることが出来ます。
現在の流れは女性的に線の細いスーツが、伝統的な男性的力強さを纏ったスーツに振れている感があります。
大柄のストライプは本来は英国生地の定番でした。しかし、近年の細いラペルのスーツには柄がうまく乗らず相性が悪く、人気は下火気味でしたが、最近のスーツはまた襟巾が広くなりつつあり感度のいい購入層から人気が戻ってきた感があります。
第五回は引き続き「厳選生地について②」に紹介させていただきます
オーダースーツCorvo
オリジナルバンチ紹介③バンチ作成(全7回)
Corvoのバンチブックは外観、サイズにもこだわっています。
やはり、通常サイズのカードサンプルで実際の仕上がりとの印象が大きく変わるものです。
Corvoでは、お客様には生地が最も美しく見えるように通常の倍以上の大きさで、黄金長方形でカットした生地をご用意し、通常サイズのバンチでは作り出すことのできない、より出来上がりに近い形でご覧いただけます。
初めは通常のバンチのサイズで作ろうということであったのですが、顧客重視の観点を重んじるCorvoでは制作コストのかかる大きめのバンチにすることにしました。
いい商品、いいサービスを提供することにより多くのお客様に来ていただければコスト圧縮できるというCorvoの精神がこのバンチにも宿っています。
下の画像は制作過程の生地サンプルの切り出しです。
(輸入された状態で数十m単位で巻かれた生地にチャコで必要分にしるしを入れます)
(ハサミで一気に切り上げます。きれいに切るためにはリズムが大事だとか。)
(さらに裁断機に入れる前にチャコでしるしをつけます。実際にサンプルになったときに柄を一番お客様に見ていただきやすいようにと柄合わせだったり、意外にコツがいるそうです。)
(何十年も使い込まれた裁断機。油できれいに磨かれていました。今ではこの裁断機を製造しているところはなく、これからも現役でいてくれないと困るそうです。)
(出来上がったサンプルたちです。※写真の生地はCorvo用のものではありません。)
出来上がったサンプルをバンチにスタッフ自身ではさんでいきます。
Corvoのスタッフたちで「この生地はこの顧客さんにすすめよう」「自分用にこれを買おう」などと印象を語りながら、はさんでいくのは楽しいものです。
外観は濃紺のリザード調の型押し、金箔印字となっておりバンチブックとしては最上級の仕上がりとなっています。大きさゆえに迫力があります。 一流生地ブランドもここまで上質のバンチを作っているところはないでしょう。
次回は厳選生地の詳細について
オーダースーツCorvo
オリジナルバンチ紹介②生地選考(全7回)
生地選考について まず生地を選考するにあたり、ちいさな生地サンプルを数千種以上を生地商社にご用意いただきました。
その中から、選考基準を満たす生地を探していくわけですが、これがなかなか楽しいもので私は休みの日を利用してオリジナルバンチの生地探しをしておりました。
良質な原毛を用いることは当然のことですが、打ち込みがしっかりしていないと強度、皺に対する復元性は落ちてしまいます。
打ち込みというのは単位面積当たりの糸の使用量を指しており、しっかりしているというのは多くの糸を使っているということです。
そして生地の撚り方、太さなどでその生地の強さ、復元力は変わってくるものです。
ビジネスユースを意識し一日中着用されていたとしてもその次の日ハンガーにかけておくだけで嫌な皺はほとんど消え、また、擦り切れたりということがない生地を選びました。
第一回で述べたように上質な原毛を用いてウェイトもしっかりとある仕立て映えする生地を選ばなければ良いスーツは生まれません。
そこで我々が最終的に選出した60種類の生地には英国生地メーカーを代表するメーカー、高級メゾン御用達の生地メーカーの生地から選出したスーパー120s~140s、ウェイトは250~280g程度のものがメインとなっております。
あえて生地メーカーの名を伏せたのは、ブランド名に惑わされず本当にいい生地を手で触っていただきその良し悪しを判断していただきたいからです。
色味や柄は当店のアイコンとなる「奉文」(ともゆき)に代表されるようにCorvoのスーツとは「テーラードの伝統を守りつつも、クラシックな趣を残しつつも、どこか都市的である」との意匠の考えの基、幅広めのストライプ、マイクロチェックなど他店では取り扱いの少ない生地を豊富に揃えました。
本当は書き足りない気持ちですが、具体的な生地紹介は第四回に譲るとします。下にそのほんの一部を写真にて紹介いたします。
三回はバンチの作成についてご紹介させていただきます
オーダースーツCorvo
オリジナルバンチ紹介①(全7回)
Corvoの「よい縫製のスーツは生地にも責任を持つべきである」の考えの基、さらには兼ねてよりのCorvoらしさを求め生地から提案したいとの思いから、オリジナルバンチの制作にあたることに踏み切ることになりました。
今シーズン(2016SS)からの試みで、厳選に厳選を重ね、60種以上の生地を集めました。
現在のオーダーメイドスーツ店の生地の流通というのは生地商社、大手生地メーカーの発行するバンチブックという数十種の生地が束ねられた見本帳、「バンチブック」からお客様に生地を選んでいただくという方式です。
この方式は在庫をオーダーメイドスーツ店が直接抱える必要がなく、多くの生地をお客様に選んでいただけるメリットがあります。
この方式が、一般的になる以前は、それぞれの店の店主たちが生地商社から仕入れた生地を在庫として抱え、自分たちのお勧めの生地として顧客の皆様たちに提供していました。
「バンチブック」の流通は在庫リスクからの解放、商品の多様性と引き換えに、店ごとの個性をなくした面があります。
そこでCorvoは、自分たちの考える形やアイディアを具現化し、数多ある生地の中からCorvoの選考基準を満たしたものだけを選び抜きオリジナルバンチに採用しております。
生地商社さんにはまずは「ハンドワーク、アイロンワークを多用したCorvoのスーツにふさわしい生地」ということで数千種類のサンプルを用意していただきました。
アイロンワークとは熱と蒸気を加え生地を変形させる工程を指します。アイロンワークを多用した生地というのはある程度のハリ、コシがなくては立体感が維持できません。
ハンドワークは通常のミシン縫いに比べテンションがかかるためハリ、コシがないと意図しない皺が出てしまいます。
相当数の生地がありましたので、そこから当店の形に合うものを見つけるには、数ヶ月間にわたって事務所、時にはご厚意で倉庫にお邪魔させていただき何度も打ち合わせをさせていただきました。 営業時間を超えても尚、お付き合いいただいた担当者の方には本当に感謝しております。
次回、選考についてご紹介いたします。
オーダースーツCorvo