2016年11月
ダブルについて
景気が良くなると大きな服が流行になるといわれている。
潜在的に生地をつかう量が多い服はリッチと印象付けられているようだ。
かつて弱小国のプロイセン軍の軍服は小さいものだった。それは生地を使う量を減らし軍服のコストを下げるためだった。
だからダブルのスーツは、景気が良くなると注目され、またリッチな印象を与えるのかもしれない。
ダブルブレストのスーツにはクラシカルなものが似合う。
オルタネイト、バンカーストライプ、へリングボーン、グレーンチェックなどは高相性だ。
特にオルタネイト、バンカーストライプは最近のバンチなどでは、取り扱いが少ない。十年前であれば、オルタネイト、バンカーストライプは定番だった。
最近のダブルの人気で再び注目されつつある。
ちなみにダブルのスーツはほとんどのショップで雑誌などのイメージでオーダーしても思い通りに上がってこない。
ほとんどのパターンオーダーの縫製工場では二十年前の型紙をそのまま使用している。
着丈が長めに設定れており、今の着丈のサイズ感で上げるとVゾーンが狭くなる。また総じてゴージ位置も低い。
一般的にダブルブレストは総毛芯で作るのだが、重くなりがちなダブルを軽快に着こなすには芯なしで作ってみるのもありだ。
リザードの靴
リザード(トカゲの革)の靴は、今までほしいと思いながら、なかなか挑戦しにくかったが、先日購入した。
独特の凹凸(腑という)のリザードの革は時計のベルトなどでたまに目にする。
リザードは組み合わせ次第ではいやらしくもなる。着こなしを熟知した上級者向けの品だ。
「やはり仕立屋なら一足は」と今回購入した。
Corvoの莞爾、奉文をはじめとしたピークドラペルのフォーマルなスーツにはリザードは高相性だ。ダブルブレストのスーツならばより高相性だ。
購入するまでの想像よりも、合わせの難しさはかんじなかった。
むしろ、履き心地は柔らかく牛革に比べ抜群に良い。
また、リザードは漂白してから後染めするため、発色の良さと他にはない光沢がある。
最近はさらにアク(笑)の強いクロコダイルのものに挑戦したいと思っている。
セラピアンを使用してみて
今回、「セラピアン」の入荷に合わせ、私用にキャメルのシボ革の2WAYのバッグ、ボストンバッグを仕入れた。
セラピアンのブランドとしての紹介は多くの媒体でなされているので今回は使用したレポートを綴る。
以前は仕事柄、書類、本などの荷物が多く普段からボストンバックを使っていた。普段使いにはボストンバッグは移動の際に大きく不便で荷物の多くはいる2WAYのものにした。
型押しの革(カーフを型押ししたもの。「エヴォリューション」)は傷が目立った。当然、革製品なのでなのでクリームを塗れば消えるのだが。
シボ革は傷が目立ちにくい。指でこすれば、一目ではわからないぐらいに目立たなくなる。
個人的には革製品に傷はつきものと割り切っているが、気になる方はシボ革の製品を選んでみるといいかもしれない。
以前、紹介したがシボ革は経年変化を楽しむことができる。革製品は傷を楽しみながら使うのが本来の使い方だ。
ビジネスバッグとなると黒が基本だが、ブラウン、グレー、キャメルなどの選択もありだ。
簡易的に良い革が使われているかどうかは、鞄を置いたときに自立するかどうかでわかる。
良質な革は柔らかいが、直立したように形状を保つ。店頭で鞄を見せてもらうとこれでもかと紙が詰まっている。質の良くない革のものは、自宅に持ち帰ると拉げている。
当然、「セラピアン」の製品も自立する。物を入れても入れなくても形状の崩れがない重要だ。
他の「セラピアン」の製品と同様、内部は人工スエードのアルカンターラ、ジッパーもパラジウムの鏡面磨きされたものを使っている。
質感に申し分はない。
コートの楽しみについて
冬が来るのが楽しみなスーツ好きは多いと思う。
コートの季節だからだ。
最近のコートはカジュアル色の強いデザインのPコート、ポリエステルなどの機能を重視したものもある。
スーツに合わせるとなると、素材、デザインにおいても流行に左右されない定番のものが好ましい。
コートというのは末永い付き合いになるということを前提に選ぶべきだ。
ちなみに袖は長い期間の使用で擦り切れることを想定して、手の甲を覆うぐらいの長さにする。
丈は短い物ではなく、長い物のほうが優雅である。
上質な生地で仕立てる場合、肌に密着したフィッティングではなく適度にスーツとコートの間に空間を持たせた方がドレープが生まれる。
カシミヤのコートは新品の状態では光沢がありすぎて悪目立ちしてしまう。空気を含みフェルト状になる、経年変化を楽しむのが本来の楽しみ方である。
胸ポケットにはやはり、革手袋を挿すのが良い。