2017年1月
個性の必要性
紺かグレーの上質な生地に丁寧な仕立のスーツに白のドレスシャツ、黒のストレートチップの組み合わせはかっこいい。しかし、普段使いには、まさに雑誌を参考にしたか、店員に勧められたような格好では面白みがない。
多くの成功したブランドには「自己同一性」、すなわち他者との違いが明確にある。
今では当たり前のベージュ、淡いブルーなどのスーツが一般に普及したのはブリオーニが1940年代に発表してからだ。それらの色を取り入れるだけで当時は革新的だった。
現在、最も成功しているスーツブランドと言えば「トムフォード」だ。男性性を前面に押し出したスーツは強い灰汁を持っている。
例を出せば、ルブタンの靴はピンヒールに赤い靴裏という一目で識別できる視覚的違いがある。ルイヴィトンのダミエ、モノグラム。
人間も同じだと感じる。歴史上、評価される人物というのはみな性格の面、ファッションの面でも個性的だ。
アップル社の元CEOの故ジョブズ氏は非常に個性的なことで有名だ。そのことが仇になりアップル社を追われた過去を持つ。
ジョブズ氏の周知のタートルネックにジンズ、靴はニューバランスという出で立ちは、多くのシリコンバレーの起業家にも真似されている。
ジョブズ氏がソニーの工場に訪れた際、盛田昭夫氏に同じ作業着を着た工員について尋ね「労働者とソニーの絆」と言われ、感銘を受け制服として作ったものだ。だがアップル社の従業員にブーイングを受け自身で着ることになったという逸話がある。
ちなみに氏は銀行などの交渉時はブリオーニのとびきり上等なスーツを着用したといわれる。
すなわちアップル社の顔役として、意図的にセルフイメージを構築した。
以前もマッカーサーのコーンパイプを介してセルフイメージについてブログで紹介した。
(リンク先http://www.sartoriacorvo.com/blog/2016/09/post-380.php)
(個性を押し出したスタイル)
白いシャツ
英国紳士はガーデニングする際にも身なりを気にするのだとか。
貴族文化が根付いた西欧諸国では装う行為、生活様式の一部ととらえられている。
シャツの中でも、白いシャツというのは別格だ。
白いシャツの現在の評価は、女性を筆頭に装いのセンスとしては芳しくない。柄シャツ、色物シャツなどの方が評価が高い。
柄物シャツがスーツに合わせられるようになったのは1920年代からと言われている。エドワード8世がスーツに合わせるようになって普及したといわれている。
本来、白のシャツというのは高い地位の象徴そのものなのだ。
どうしても綿は繊維が毛羽立ち皮脂、垢、汗、ゴミが沈着、付着し汚れが目立ってくる。
数年前、流行った白パンツもクリーニングしても黒ずんだというお悩みの方も多いだろう。それは綿特有の毛羽立ちが原因だ。消耗品と割り切るしかない。
白を白で保つということは、枚数、クリーニングなどのコスト、手間がかかる。
だから昔から白い衣装というのは、そうしたコスト、手間をかけれることを、それが可能な高級貴族の証だったのだ。
綺麗に手入れされた白いシャツはその人の高い地位を暗喩したものといえる。白いシャツというものの見方が変わるだろう。