仕立ての良いスーツの見分け方①(毛芯と接着芯)
ネットで見ていると仕立ての良いスーツについての解説が多くあります。
多少間違った情報も見たので今回は私が解説しようと思います。
仕立てが良いという定義は多々ありますがここでは「イセを多くとり、アイロンワークを施し、立体的に仕立てられたスーツ」とします。
よく毛芯を使っている、接着芯を使っているといいます。
毛芯は構築的に仕立てたいなどの仕立ての目的に応じて種類を選びます。
総毛芯は接着芯のみのスーツに比べ原価が高い(1000円~3000円程度)ので毛芯仕立ては仕立が良いといわれますが、あまり関係ありません。
ナポリの50万を超す高級スーツでも毛芯(この場合は台芯を指します)を用いない場合も多々あります。
アンコン仕立ては全く毛芯を使用しないと勘違いされがちですが、胸増芯、肩芯は大体入っています。
たまに半毛芯より、総毛芯の方が高級という意見もありますが、1000円程度の材料費の違いにすぎません。
半毛芯は腰ポケットまでの位置までの台芯か、総毛芯は裾までの芯かの違いで、軽くしたい場合は半毛芯を使用します。
今度詳しく解説します。
毛芯を使って仕立てても接着芯を多くの場合は併用しています。
接着芯は生地に張り合わせる薄い布のようなものです。
アイロンの熱でノリを溶かし張り合わせます。
使用する理由としては大きく二つです。
①柔らかい生地に強度を持たせる。
②湿度による、生地の動きを抑える。
①については現在主流のイタリア系の柔らかく薄い生地は縫製の際、どうしても針のテンションでひずみが出ます。
それを避けるために接着芯で生地と布を張り合わせることで強度を持たせます。
これにはミシン縫製の大量生産のスーツに向け生産効率を上げる意味があります。
②は皺を気にする日本の市場に対応するためです。
生地は獣毛で、人間の髪の毛同様、梅雨時期、夏のような湿度が高い時期にはバサバサになったり、開くように、生地も湿度で動きます。
特に細い糸を使用したイタリア系の生地は、毛の表面積が大きくなり、また薄手の生地は、その影響を受けやすいです。
スーツにした際、ぶくついたりします。
このため、日本では一流の仕立屋でも接着芯を用いる場合もあるので「接着芯≠仕立ての悪い」というわけではありません。
①の意味の場合は往々にして安価なスーツが多いので接着芯=仕立てが悪いというイメージが付いたのでしょう。
イタリアなどの欧州製のものは日本の湿度、気候には合いにくいです。
フェラーリなどの車のボタンも年数がたつと日本の湿度で溶けてベタベタしますね。運転した後は手が真っ黒と。
布を張り合わせるためにイタリア生地のしなやかで軽やかな質感は失われます。
最近では本来の生地感を楽しめるように接着芯を使わないスーツも増えています。
コルヴォの場合は標準仕様では接着芯を使いません。希望の際はお申し付けください。
接着芯が入っているかどうかも正直、スーツに対する考え方の違いで仕立ての良し悪しには関係しません。
前置きが長くなりましたが次回、アイロンワークについて紹介しようと思います。
トラックバック(0)
トラックバックURL: http://www.sartoriacorvo.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/732