2019年10月
N様 ダレスバッグ
赤色がセルフカラーのN様。
愛車も赤がイメージカラーのあのスポーツカーブランドの車
赤のダレスバッグをオーダー。
タンニン鞣しのヌメ革を使用。
ヌメ革由来のムラ感が、アンティーク感を醸します。
シャツ素材について
ジャケットが手放せない季節となり、スーツの需要も増えてまいりました。
しかし、ビジネスマンにとって一番欠かせないアイテムとはシャツではないかと思っています。
シャツは、普段からスーツを着る人は何着も持ち、そうでなくとも一着は持つ、クールビズの時期は一番の顔となる、通年の必需品です。
より肌に近く、毎日着るシャツを選ぶ際には、デザイン・着心地だけでなくお手入れ方法も重要なポイントとなっています。
しかし、シャツ素材である綿とポリエステルは一長一短で「どの割合がいいの?」というお声もちらほら。。
そこで大まかに3つの割合から、選ぶポイントを挙げたいと思います。
シャツといえば綿100%が一番いいものとされています。
良いスーツに合うのも綿100%のシャツですから、オーダースーツ屋としてもおすすめしたいのですが
これは「着心地がいいが、毎日着るには大変」なのです。
綿は、光沢があり高級感のある見た目。柔らかく吸湿性、通気性、保温性に優れ肌に優しく着心地がよい。
劣化しにくく熱に強い。毛玉もできにくい為長く着られるのがメリットですが。
シワになりやすくアイロン、又はクリーニングに出す手間があること。
縮みやすいこと(1~2cm程)、日焼けで黄ばみやすい、そして高価である、というのがデメリットです。
ここぞという時のシャツや、毎回手入れができる余裕のある方向けとなります。
昨今では綿100%の形態安定加工が施されたシャツもありますが、ポリエステルに比べると防シワは完全とは言えません。
ポリエステルは綿とは全く逆で「着心地は(綿に比べると)劣るが、手入れがしやすい」面がありますが
その分汚れや臭いがつきやすい、毛玉ができやすいというデメリットもあるため、なかなか長い着用はできないでしょう。
ポリエステル100%のシャツは、お手入れが簡単な方がよく、流行ごとにデザインを変えたい方に向いているといえます。
熱に弱い部分もあるので、アイロンはかけても軽く、というのが忙しい現代人に嬉しいですね。
そこでいいとこ取りをしている、綿50%ポリエステル50%シャツの登場です。
それぞれ100%のものと比べると最大のパフォーマンスをしてくれるわけではないのですが
一番人気はこの割合でしょう。
綿100%より手入れしやすく、ポリエステル100%より着心地よく、比較的安価なものが多いので
オーダーシャツ最初の一枚に最適ではないでしょうか。
ちなみに、生地の織り方によって割合が決まっていたり、デメリット部分を軽減する織り方もあったりします。
また次の機会に。。
秋の声
先日、行きつけのバーで梨を頂きました。
シャリシャリとした歯ごたえと、口の中いっぱいに広がる甘い果汁のあの感覚が大好きで
子供の頃は、リンゴは剥かないのに梨だけは自分で剥いて食べてしまうというほど夢中でした。
そんな思い出話に少し辛めの白ワインがついつい進んでしまいます。
そして金木犀も先ごろを迎えていますね。
今年は残念ながらまだ出会えていないのですが
どこからか匂いがすると懐かしいような、淋しいような、切ない気持ちに浮足立ち、
そしてまた酒場に足が向いてしまう。というのは言い訳でしょうか。。
さて、今は秋。夏の鮮やかな景色から無彩色に変化していく季節には
イギリス生地のような渋い色が似あうのではないでしょうか。
Corvoでは近々コートフェアも開催する予定です。
哀愁の季節に、新しいスーツと温かいコートをおともにするのもいいですね。
コート用の生地のご紹介【ウール生地】と【ツイード生地】
さて、前回はコート用生地の高級ライン、カシミヤとキャメルについてご紹介しました。
今回はもう少しお手頃な素材についてお話いたします。
ウールはお値段だけでなく、お若い方、ファッション性を重視される方にはお勧めの素材です。
カシミヤは高価である故に、一生物として使うには無難な生地が良いからと、結果的に単調な柄になってしまう事が多くなります。
300g以上のフランネル生地ならばコート生地として問題なく使用できるため、一気に色、柄のバリエーションが広がります。
屋外では快適なカシミヤコートは地下鉄、屋内などでは保温性がありすぎて暑いです。
出先、通勤用としてはウールコートの方が実用性があるのです。
一般的な既製品では黒、紺かグレーの無地のコートばかりの中、色柄のあるコートは重くなりがちな冬のスーツスタイルに華を添えます。
チェックのチェスターコートなんていかがでしょうか?
また、ジャケット生地もコートに最適です。
スーツ生地とジャケット生地の違いとは柄だけでなく、生地の甘さにあります。
というのもジャケット生地はスーツ生地ほどに糸を詰めて織りません。
なので同じ重さのものでも肉厚に感じるようになります。
スーツ地は一番動きのあるパンツにした際に、摩耗に強くなくてはなりません。ですので糸を詰めて織るのです。
特にツイード生地のコートは防寒性抜群です。
ツイードには着て馴染ませるという醍醐味があります。
以前、50代のお客様が「このツイードのコート、学生時代に買ったんだよね」とおっしゃられました。
生地が経年の変化で柔らかく馴染んでいたのが印象的でした。
昨今の生地は細く、しなやかな糸で織られ、艶っぽいものが多い中、こうしたツイード生地は野趣的で長く着ることで味を増すという違った趣が楽しめます。
そろそろ紅葉の時期も近づいてくる頃です。
お気に入りのコートで紅葉狩りなどはいかがでしょうか。
オーダーメイドのトレンチコートの取り扱い
今季よりトレンチコートを取り扱いを始めます。ですので今回はトレンチコートのご紹介。
トレンチコートはポロコート、タイロッケコートをベースに第一次世界大戦中に塹壕の中で闘う兵士の為にバーバリーによって開発されたと言われています。
出典;https://isshomono.com/coat/post-5747
個人的にトレンチコートは初めてスーツ用に買ったアウターなので非常に思い入れがあります。
トレンチコートには各種の意味のあるディテールがあります。
ダブル(防寒性を重視)、肩の肩章(正確にはピストルの下げひもを掛けるもの)、胸のパッチ(ライフルの銃床が当たり擦れを防ぐため、またはすべての釦を閉じた際に雨水の侵入を防ぐものとも)、ベルトのⅮ環(手榴弾をぶら下げるもの)、背のパッチ(雨水の侵入を防ぐ)。
現在では簡約化されすべてのディテールが付属するわけではありませんが。
すべてのディテールをてんこ盛りにするとミリタリー感が強くスーツのアウターとしては馴染みにくいのは事実です。
簡略化もトレンチコートの時代に合わせた進化の過程でしょう
因みに、トレンチコートにコットンの生地が多いのは、塹壕は兵士が隠れる堀みたい穴なので、雨が降ると水浸しになるため、防水加工のコットン地のギャンバジンの生地が使われました。
トレンチコートのミリタリーな実用性を兼ねたデザインは機能美が評判となり戦後、余剰品が民間に流れ、冬用のアウターとして広まりました。
ちょっと古いですがトレンチコートは、お酒と並び大人の男性の象徴にも思えます。
映画「カサブランカ」でスーツにトレンチコートを着たリックが、紙巻タバコを鉛筆持ちし、グラスを捧げ、「君の瞳に乾杯」と言うセリフはあまりに有名です。 トレンチコートのベルトはウェストがシェイプされXラインが強調され、スタイルがよく見るため女性にも人気なコートとなる所以です。
最近は似た効果を目的に、チェスターコートにもベルトが付属するものが多くなっています。
仕立て職人にお願いしようにも、トレンチコートを作れる仕立て職人はほとんどいません。
ちなみに、トレンチコートはウールで作るのが今では定番化しています。 元がポロコートなのでウール生地で仕立てても違和感はないわけです。
出典;https://openers.jp/Gallery/1354219?gallery_page=142
ウール生地のトレンチコートはドレッシー感が出るので、ドレススタイルがお好きな方、スーツにも好相性。 最近ではバーバリーなどにてカシミヤ100%のものも出ています。
非常にドレッシーな印象で、こうしたコートが今後さらに流行るのではと思っています。
従来のオーダーメイドのトレンチコートは既成のラインを流用する場合が多いのです。そうした工房は、コットン生地のトレンチコートをメインに作る工房ですので、ウール生地と違い、コットン生地は熱可塑性がなく、アイロンワークの技術がなく、はなからアイロンワークを施さない工房が多いのです。
そうした工房で、ウール生地のトレンチコートを仕立てると寸法は合っているのにどこか、平面的なコートが出来上がるわけです。
アイロンワークの施されていないジャケット、コートはどこかチープな印象を与えます。
ほとんどのチェーン店ではインポート生地をスポンジングせずに縫います。
生地にも下拵えがあって、インポート生地は輸送中にねじれが生じます。
また日本の気候に合わせる為に生地に蒸気をあて生地のねじれ、水分量を調整します。
この工程をしないと使用中、経年の型崩れの原因となります。
現在、サンプルを製作中ですので出来上がり次第アップします。
コート用の生地のご紹介【カシミヤ】と【キャメル】
実は私、生地紹介はあまり得意ではありません。
というのも、ちょっと調べれば他店のホームページやブログのマニアックな記事がいくらでも出てくるのでなんとなく避けていました。
9/23、秋分の日も過ぎコートについて調べていると、案外コート生地の紹介がない事に気づきました。
そんな訳で今回は、コートに適した生地についてご紹介させていただきます。
コート生地の繊維は大きく獣毛系(カシミヤ、キャメル、ウールなど)、コットン、化学繊維の3種類に分けられます。
中でも高級素材といわれる獣毛系のカシミヤ・キャメルに焦点を当ててみましょう。
いきなりですが、最上級のコート用の繊維はビキューナだと言われます。
しかしビキューナはお値段も数百万という代物で、なかなか現実的な品ではありません。
(コルヴォでは取り扱い例もあります。ご希望がございましたらお申し付けください。)
カシミヤで作られたものは一般的に最高級生地として扱われており、「繊維の宝石」とも言われスーツ生地に使われるウールよりも細い繊維です。
スーパー180のウールより細いといえば、その細さが伝わるでしょうか。
カシミヤを使った生地は特有のしっとりとしたタッチとなり、これを「ぬめり」と形容しますが、うっとりするような肌触りは、その繊維の細さに由来しています。
また、カシミヤ山羊一匹からとれる量も200g程度とごくわずかで、例えばロロ・ピアーナのカシミヤ生地の中で一番のヘビーウェイトである1㎡あたり560gの生地を3m使用した場合、その製品には13頭分近くも必要になる計算です。
さらに実際は選別で使えない繊維は廃棄されるのですから、これ以上の頭数の繊維が必要となるわけです。
元々希少なもののさらに良いものだけで作られるカシミヤ生地は、重さと値段が比例するといわれるぐらい、繊維の使用量で価値が決まるのです。
カシミヤ山羊は寒暖の厳しいモンゴルの高原に住んでいるので、軽いだけでなく保温性も抜群です。
実用性も兼ね備えているカシミヤは、ひと昔前には「一生もののコート」としてこぞって買われたものです。
そして、カシミヤと似た特性を持つ繊維としてキャメルヘアーがあります。
キャメルヘアーとは文字通りラクダの毛のことで、ラクダもカシミヤと同じように寒暖の差が激しい砂漠で体温を保持するために保温性に優れています。
特に生まれて一回目の刈り取った繊維を「ベビーキャメル」と称します。
人間でも赤ちゃんの毛の方が柔らかいように、これも特に細い繊維ですから、生地の「ぬめり」はカシミヤに匹敵するほどです。
キャメルはカシミヤほど知名度がないからかあまり高価ではないのと、フェルト感が長持ちするのが魅力です。