代表コラム
夏の暑さを凌ぐ、麻素材(リネン)
最近、注目度が増している麻。
まだカジュアルな世界での流行のようです。
ちなみに麻にも種類があり亜麻のものはリネンとも呼ばれます。
1970年代まで麻は夏のビジネススーツとしても一般的でした。 カンカン帽に開襟シャツに生成りのスーツ。映画などで見たことあるでしょう。
現在では麻のスーツはビジネスの場では独特のシワ感があり、色落ちしやすいこともあり、生成り、白といった色味が多く、敬遠されがちです。
空調設備の整てっていない昔は少しでも涼しくということで麻も許容されていたのでしょう。
麻は、通気性、吸湿性に優れ、気化熱によって涼気を得られます 。
機能性に対しても、見た目は強い光沢があり、透け感と、独特の光沢で清涼感があります。
洗濯すればするほど柔らかく馴染み、白くなるという経年変化の魅力があります。
専門な話ですが一般的に夏物生地は通気性を確保するために、平織りで薄いので、光沢、質感、強度が落ちます。素材自体に光沢があり、強靭な繊維の麻は重宝されます。
麻の魅力とウールのメリットを兼ねた混毛生地も多くありますので、ぜひお試しを。
(麻とコットンの混毛生地のシャツ)
シャツにこだわる。④
今日でこの「シャツにこだわる」を終わりにします。
高いシャツと安いシャツの違い。
初めは数千円のパターンオーダーのシャツで良いと思います。
サイズと襟型があっているだけでスーツがぐっと引き立ちます。
普段きているスーツの最低1割、欲を言えば2割、シャツにお金をかけることができたらより良いでしょう。
良いシャツは着た人にしかわからないものがあります。
価格の差は生地と縫製です。 シャツは本来、下着でした。
前と後ろが長いのは、前と後ろをボタンで留めて陰部を包んでいた名残です。(嘘じゃありません。)
男性の大事な部分に触れてたもの、ですので肌触りは重要です。
今ではインナーを着てシャツを着る方が大半ですが、本来は着ないのが正式です。
僕は、高温多湿の日本ではインナーを着ることオススメします。
肌触りの良い生地とは糸が細く、本数をしっかり使ったものです。
残念ながら日本では番手表記(高ければ細い糸)を上げて、糸の本数を減らした生地が多々出回っています。
「綿百パーセントはアイロンがかけにくい。」 は嘘です。
糸の本数がしっかり打ち込んである生地はハリがあり、形状記憶とまではいきませんがノンアイロンでも問題なく着れます。
スーツ生地でも同じスーパー120でも値段が違う場合には、この原理があります。
縫製については長くなるのでまたの機会に。
シャツにこだわる③
シャツってスーツに比べ安く、原価率が高く、あまり儲かる商品ではありません。
ジャケットを採寸するのとほとんど手間も変わらない。
だから、日本の供給側(仕立屋)はシャツを押さないのか、と一人考えています。
仕立屋でシャツを勧められたらよほど暇か、良心的な仕立屋と考えてください。(笑)
また消費者側からすれば、2~3年で使い捨てる、消耗品だととらえられていますしね。
シャツ専門の仕立屋って神戸に一軒、この間、雑誌で見た千葉に一軒しか私は知りません。
シャツに対する意識変化はこれからだと思っています。
シャツって高くても安くても、五枚を使い回した場合、寿命は2~3年です。
シャツの寿命を2年として着用日数は
365日×2年/5=146日
3年なら着用日数は
365日×3年/5=219日
仮に1万5千円のシャツならば一日当たりおおよそ70~100円です。 高いか、安いかは主観ですが、私は安いと思います。
このブログを見ているという時点でスーツに興味がおありだと思います。 スーツをより際立たせためにもシャツに投資されてみてはいかがでしょうか?
シャツにこだわる②
スーツに拘るというのは仕事に対する姿勢とエッセーを見つけました。
「スーツなんてただの仕事の時に着る物。」 とみなして、学生服や制服のように見ていたらスーツに対する意識なんて上がりませんよね。
仕事にまじめな人ほどスーツに拘ってますよね。
有名どころでは、スティーブ・ジョブズ氏、孫正義さんも普段はラフなイメージでも、200万クラスのスーツを着るとか。
逆にスーツに拘りを持っていると、仕事に打ち込む姿勢も変わってくるから不思議です。
私なんて「スーツが上がった日」なんて仕事場に行ってお客さんやスタッフにスーツを見てもらいたくなります。(ただ、見せびらかしているような。)
三月、これから社会人になる方、仕事に打ち込みたいという方にこそ、スーツに拘ってもらいたいですね。
「馬子にも衣装」は嘘でもないと感じますね。
前置きが長くなりましたが、スーツスタイルはネクタイ、シャツ、ベルト、革靴、鞄の総和で成り立つものです。
スーツとシャツの相性。 これは意外にも見落とされがちです。
販売員でもスーツとシャツの相性を考えて襟型、ポケットの有無、カフス、前立、背のタックの形状を語れる人は少ないです。
シャツには絶対的なタブーがあります。
スリーピースならポケットは無しが良いでしょう。
スーツは本来スリーピースでした。シャツのポケットは2ピースで着られるようになってつけられたものだからです。
クレリック(襟のみ白い物)とボタンダウン。
スリーピースにボタンダウン。(これは、良しとする人もいます)
スーツのゴージとシャツの襟のおさまりってスーツスタイルの表情で最も大事な部分です。
「スーツに着られてる。」といわれる方はシャツの襟選びが間違っているからのことが多いです。
顔・首、シャツ、ジャケット。
顔・首とジャケットの接続がうまくいかないので顔、スーツが浮いてしまうのです。
具体的な簡単な相性を述べると
ゴージの比較的高いイタリア系のスーツなら
襟型は開き気味、前立ては裏前立、全体のフィット感はタイト。
ゴージの比較的低いイギリス系のスーツなら
襟型は若干閉じ気味、前立ては表前、シルエットはボックス型で少しゆったり。
かなり簡略化してますので、実際にシャツ選びをする場合は、スーツそれぞれの形を見たほうがよいでしょう。
シャツにこだわる。①
10万のスーツを仕立てたなら、シャツはオーダーで一万出してほしいです。
いきなりこんなことを書くと、「商売気が多い奴だな」と思われそうですが。(笑)
良いシャツとは何か。 生地の良し悪し、縫製などなどございます。 第一は体にフィットすることです。
第二はスーツとの相性を考える。 第三、第四に生地、縫製と考えます。 体にフィットするについて今日は書きます。
仕立てたスーツの袖丈は手首のぐりぐりまでが標準です。 ジャケットから1㎝前後シャツがのぞくのが基本です。 昔はシャツは消耗品、ジャケットは一生物と捉えられていた時代の、ジャケットが汚れないようにした名残です。
ジャケットからシャツ袖がのぞかないのはスーツスタイルとしていただけませんね。また出すぎも不格好ですね。
また、短い物はパンツからシャツの裾が出やすく、不都合ですね。
(僕は胴体が長く、先生にわざとシャツを出していると疑いをかけられ、学生時代から先生と一緒にテーラーで安いオーダーシャツを買ってました。)
首がぶかぶかなシャツを着ていたらスーツの魅力は半減しますね。
「ジャケットを脱がなければシャツなんて見えやしない!」 背中、脇にあまりのあるシャツを着ると、ジャケットにシャツの皺が出ます。
昔のように、ゆったり目で、重い生地のスーツならばそんな問題もないのですが、現代のタイトで、軽量な生地ではシャツのシワは意外に天敵です。
仕立ての良いスーツの見分け方②(イセ)
良いスーツは「イセ」、「イセ込み」が多いといいます。
イセとは一般的な言葉ではないです。
今回はイセについて紹介します。
イセが多いスーツは動きやすいです。体に沿わせることができるのでゆとりを持たせても、見た目はすっきりするという理想的なスーツが仕上がります。
ご覧のように袖側を胴体側のアームホールより大きな生地を縫い付けるため、皺が出ます。
これをイセと言います。あえてイセを処理しないのが「雨降らし袖」「シャツ袖」という仕様です。
イタリア南部のナポリのスーツ、ジャケットではではこれを「抜け感」として楽しみます。
通常はアイロンでこれを丁寧に何度もかけることで皺を取り除き、成型するのです。
これを「いせを殺す」といいます。
よくハンドメイドのスーツにはイセがあって、マシンメイドにはないといわれます。
マシンによる、成型機による、量産型のスーツでもイセは多少は入っています。
ハンドの方がより多くのイセがあって動きやすいんです。
特に袖山が盛り上がった、ロープドショルダーの袖付けはハンドでないと不可能です。
肩と袖のイセ量が多いのでハンドでアイロンで丁寧にイセを処理しないといけないからです。
(ロープドショルダーのスーツ)
正直、ロープドショルダーのスーツというだけで仕立ては間違いないでしょう。
ちなみにロープドショルダーはコルヴォのスーツは標準仕様です。
あえて袖山を作らないものでもイセ量を多くとっているものもあります。その見分け方は袖の皺です。
これは着ると腕が入るので目立たなくなりますが、ハンガーやトルソーに着せると目立ちます。
良いスーツは「ハンガー面」が悪いといわれます。
それはイセがあるので人体に着せ付けた際はきれいになるのですが、ハンガーにかけると皺が目立つことを指しています。
立体的に作られている証ですね。
後イセを入れる部分としては肩線です。
上側が後見頃(背中側)
人間は前に手を出すと背中が大きくなります。
ですので背中側の生地を多く取り動きやすいようにします。
単純に背巾を出すと動きやすいスーツは仕上がります。しかし、背中に変なあまり生地が出て不格好です。
サイズ感があったうえでの前提ですが、「前ならえ」をして背中が窮屈な感じがしなければそれはイセを多くとった仕立てのスーツになります。
フィット感を追求しつつも動きやすさ追求するの技がイセなのです。
仕立ての良いスーツの見分け方①(毛芯と接着芯)
ネットで見ていると仕立ての良いスーツについての解説が多くあります。
多少間違った情報も見たので今回は私が解説しようと思います。
仕立てが良いという定義は多々ありますがここでは「イセを多くとり、アイロンワークを施し、立体的に仕立てられたスーツ」とします。
よく毛芯を使っている、接着芯を使っているといいます。
毛芯は構築的に仕立てたいなどの仕立ての目的に応じて種類を選びます。
総毛芯は接着芯のみのスーツに比べ原価が高い(1000円~3000円程度)ので毛芯仕立ては仕立が良いといわれますが、あまり関係ありません。
ナポリの50万を超す高級スーツでも毛芯(この場合は台芯を指します)を用いない場合も多々あります。
アンコン仕立ては全く毛芯を使用しないと勘違いされがちですが、胸増芯、肩芯は大体入っています。
たまに半毛芯より、総毛芯の方が高級という意見もありますが、1000円程度の材料費の違いにすぎません。
半毛芯は腰ポケットまでの位置までの台芯か、総毛芯は裾までの芯かの違いで、軽くしたい場合は半毛芯を使用します。
今度詳しく解説します。
毛芯を使って仕立てても接着芯を多くの場合は併用しています。
接着芯は生地に張り合わせる薄い布のようなものです。
アイロンの熱でノリを溶かし張り合わせます。
使用する理由としては大きく二つです。
①柔らかい生地に強度を持たせる。
②湿度による、生地の動きを抑える。
①については現在主流のイタリア系の柔らかく薄い生地は縫製の際、どうしても針のテンションでひずみが出ます。
それを避けるために接着芯で生地と布を張り合わせることで強度を持たせます。
これにはミシン縫製の大量生産のスーツに向け生産効率を上げる意味があります。
②は皺を気にする日本の市場に対応するためです。
生地は獣毛で、人間の髪の毛同様、梅雨時期、夏のような湿度が高い時期にはバサバサになったり、開くように、生地も湿度で動きます。
特に細い糸を使用したイタリア系の生地は、毛の表面積が大きくなり、また薄手の生地は、その影響を受けやすいです。
スーツにした際、ぶくついたりします。
このため、日本では一流の仕立屋でも接着芯を用いる場合もあるので「接着芯≠仕立ての悪い」というわけではありません。
①の意味の場合は往々にして安価なスーツが多いので接着芯=仕立てが悪いというイメージが付いたのでしょう。
イタリアなどの欧州製のものは日本の湿度、気候には合いにくいです。
フェラーリなどの車のボタンも年数がたつと日本の湿度で溶けてベタベタしますね。運転した後は手が真っ黒と。
布を張り合わせるためにイタリア生地のしなやかで軽やかな質感は失われます。
最近では本来の生地感を楽しめるように接着芯を使わないスーツも増えています。
コルヴォの場合は標準仕様では接着芯を使いません。希望の際はお申し付けください。
接着芯が入っているかどうかも正直、スーツに対する考え方の違いで仕立ての良し悪しには関係しません。
前置きが長くなりましたが次回、アイロンワークについて紹介しようと思います。
現在の流行のスーツの型の話
今のスーツの流行はと聞かれると「南部イタリア調を基本に、英国的ディテールのもの。」と私は答えます。
現在の主流を紹介します。 2011年頃のコルヴォのハウスモデルです。
このころは三つ釦、段返りが主流でした。
ベースは2008年頃、縫製工場でマイナーチェンジされたモデルと記憶しています。
このころははまだ毛芯仕立てのスーツが良いスーツの証として言われていました。
毛芯はひと昔前に比べ薄くはなっていましたが、現在はより軽量な仕立てが主流となっています。
これに、あえてヘビーウェイトの英国生地を使うというのが今の流行です。
型は、なで肩でフロントの大きく開いたカッタウェイが大きな特徴になります。
スーツを仕立てる立場からすれば、なで肩の多い日本人でさえも背中、肩に皺が出るぐらいの極端ななで肩のパターンを提案するのはいかがなものかと思う次第です。
ちなみに肩に対してスーツがなで肩だとこの分に皺が出ます。
賛否はありますが、体型に合わせるよりもシルエットを重視する今の流れです。
英国ディテールとは剣襟(ピークドラペル)、チェンジポケットなどです。
剣襟、チェンジポケットは2008年頃にトムフォードが提案したスーツから派生し現在のトレンドとなっています。
Vゾーンに関しては年々、深くなっています。
スーツにトレンドがないとしばしいわれます。
しかし、毎年徐々には変化して、こうして見比べるとその差は大きいですね。