コルヴォ名古屋・大阪ブログ
秋の声
先日、行きつけのバーで梨を頂きました。
シャリシャリとした歯ごたえと、口の中いっぱいに広がる甘い果汁のあの感覚が大好きで
子供の頃は、リンゴは剥かないのに梨だけは自分で剥いて食べてしまうというほど夢中でした。
そんな思い出話に少し辛めの白ワインがついつい進んでしまいます。
そして金木犀も先ごろを迎えていますね。
今年は残念ながらまだ出会えていないのですが
どこからか匂いがすると懐かしいような、淋しいような、切ない気持ちに浮足立ち、
そしてまた酒場に足が向いてしまう。というのは言い訳でしょうか。。
さて、今は秋。夏の鮮やかな景色から無彩色に変化していく季節には
イギリス生地のような渋い色が似あうのではないでしょうか。
Corvoでは近々コートフェアも開催する予定です。
哀愁の季節に、新しいスーツと温かいコートをおともにするのもいいですね。
コート用の生地のご紹介【ウール生地】と【ツイード生地】
さて、前回はコート用生地の高級ライン、カシミヤとキャメルについてご紹介しました。
今回はもう少しお手頃な素材についてお話いたします。
ウールはお値段だけでなく、お若い方、ファッション性を重視される方にはお勧めの素材です。
カシミヤは高価である故に、一生物として使うには無難な生地が良いからと、結果的に単調な柄になってしまう事が多くなります。
300g以上のフランネル生地ならばコート生地として問題なく使用できるため、一気に色、柄のバリエーションが広がります。
屋外では快適なカシミヤコートは地下鉄、屋内などでは保温性がありすぎて暑いです。
出先、通勤用としてはウールコートの方が実用性があるのです。
一般的な既製品では黒、紺かグレーの無地のコートばかりの中、色柄のあるコートは重くなりがちな冬のスーツスタイルに華を添えます。
チェックのチェスターコートなんていかがでしょうか?
また、ジャケット生地もコートに最適です。
スーツ生地とジャケット生地の違いとは柄だけでなく、生地の甘さにあります。
というのもジャケット生地はスーツ生地ほどに糸を詰めて織りません。
なので同じ重さのものでも肉厚に感じるようになります。
スーツ地は一番動きのあるパンツにした際に、摩耗に強くなくてはなりません。ですので糸を詰めて織るのです。
特にツイード生地のコートは防寒性抜群です。
ツイードには着て馴染ませるという醍醐味があります。
以前、50代のお客様が「このツイードのコート、学生時代に買ったんだよね」とおっしゃられました。
生地が経年の変化で柔らかく馴染んでいたのが印象的でした。
昨今の生地は細く、しなやかな糸で織られ、艶っぽいものが多い中、こうしたツイード生地は野趣的で長く着ることで味を増すという違った趣が楽しめます。
そろそろ紅葉の時期も近づいてくる頃です。
お気に入りのコートで紅葉狩りなどはいかがでしょうか。
オーダーメイドのトレンチコートの取り扱い
今季よりトレンチコートを取り扱いを始めます。ですので今回はトレンチコートのご紹介。
トレンチコートはポロコート、タイロッケコートをベースに第一次世界大戦中に塹壕の中で闘う兵士の為にバーバリーによって開発されたと言われています。
出典;https://isshomono.com/coat/post-5747
個人的にトレンチコートは初めてスーツ用に買ったアウターなので非常に思い入れがあります。
トレンチコートには各種の意味のあるディテールがあります。
ダブル(防寒性を重視)、肩の肩章(正確にはピストルの下げひもを掛けるもの)、胸のパッチ(ライフルの銃床が当たり擦れを防ぐため、またはすべての釦を閉じた際に雨水の侵入を防ぐものとも)、ベルトのⅮ環(手榴弾をぶら下げるもの)、背のパッチ(雨水の侵入を防ぐ)。
現在では簡約化されすべてのディテールが付属するわけではありませんが。
すべてのディテールをてんこ盛りにするとミリタリー感が強くスーツのアウターとしては馴染みにくいのは事実です。
簡略化もトレンチコートの時代に合わせた進化の過程でしょう
因みに、トレンチコートにコットンの生地が多いのは、塹壕は兵士が隠れる堀みたい穴なので、雨が降ると水浸しになるため、防水加工のコットン地のギャンバジンの生地が使われました。
トレンチコートのミリタリーな実用性を兼ねたデザインは機能美が評判となり戦後、余剰品が民間に流れ、冬用のアウターとして広まりました。
ちょっと古いですがトレンチコートは、お酒と並び大人の男性の象徴にも思えます。
映画「カサブランカ」でスーツにトレンチコートを着たリックが、紙巻タバコを鉛筆持ちし、グラスを捧げ、「君の瞳に乾杯」と言うセリフはあまりに有名です。 トレンチコートのベルトはウェストがシェイプされXラインが強調され、スタイルがよく見るため女性にも人気なコートとなる所以です。
最近は似た効果を目的に、チェスターコートにもベルトが付属するものが多くなっています。
仕立て職人にお願いしようにも、トレンチコートを作れる仕立て職人はほとんどいません。
ちなみに、トレンチコートはウールで作るのが今では定番化しています。 元がポロコートなのでウール生地で仕立てても違和感はないわけです。
出典;https://openers.jp/Gallery/1354219?gallery_page=142
ウール生地のトレンチコートはドレッシー感が出るので、ドレススタイルがお好きな方、スーツにも好相性。 最近ではバーバリーなどにてカシミヤ100%のものも出ています。
非常にドレッシーな印象で、こうしたコートが今後さらに流行るのではと思っています。
従来のオーダーメイドのトレンチコートは既成のラインを流用する場合が多いのです。そうした工房は、コットン生地のトレンチコートをメインに作る工房ですので、ウール生地と違い、コットン生地は熱可塑性がなく、アイロンワークの技術がなく、はなからアイロンワークを施さない工房が多いのです。
そうした工房で、ウール生地のトレンチコートを仕立てると寸法は合っているのにどこか、平面的なコートが出来上がるわけです。
アイロンワークの施されていないジャケット、コートはどこかチープな印象を与えます。
ほとんどのチェーン店ではインポート生地をスポンジングせずに縫います。
生地にも下拵えがあって、インポート生地は輸送中にねじれが生じます。
また日本の気候に合わせる為に生地に蒸気をあて生地のねじれ、水分量を調整します。
この工程をしないと使用中、経年の型崩れの原因となります。
現在、サンプルを製作中ですので出来上がり次第アップします。
コート用の生地のご紹介【カシミヤ】と【キャメル】
実は私、生地紹介はあまり得意ではありません。
というのも、ちょっと調べれば他店のホームページやブログのマニアックな記事がいくらでも出てくるのでなんとなく避けていました。
9/23、秋分の日も過ぎコートについて調べていると、案外コート生地の紹介がない事に気づきました。
そんな訳で今回は、コートに適した生地についてご紹介させていただきます。
コート生地の繊維は大きく獣毛系(カシミヤ、キャメル、ウールなど)、コットン、化学繊維の3種類に分けられます。
中でも高級素材といわれる獣毛系のカシミヤ・キャメルに焦点を当ててみましょう。
いきなりですが、最上級のコート用の繊維はビキューナだと言われます。
しかしビキューナはお値段も数百万という代物で、なかなか現実的な品ではありません。
(コルヴォでは取り扱い例もあります。ご希望がございましたらお申し付けください。)
カシミヤで作られたものは一般的に最高級生地として扱われており、「繊維の宝石」とも言われスーツ生地に使われるウールよりも細い繊維です。
スーパー180のウールより細いといえば、その細さが伝わるでしょうか。
カシミヤを使った生地は特有のしっとりとしたタッチとなり、これを「ぬめり」と形容しますが、うっとりするような肌触りは、その繊維の細さに由来しています。
また、カシミヤ山羊一匹からとれる量も200g程度とごくわずかで、例えばロロ・ピアーナのカシミヤ生地の中で一番のヘビーウェイトである1㎡あたり560gの生地を3m使用した場合、その製品には13頭分近くも必要になる計算です。
さらに実際は選別で使えない繊維は廃棄されるのですから、これ以上の頭数の繊維が必要となるわけです。
元々希少なもののさらに良いものだけで作られるカシミヤ生地は、重さと値段が比例するといわれるぐらい、繊維の使用量で価値が決まるのです。
カシミヤ山羊は寒暖の厳しいモンゴルの高原に住んでいるので、軽いだけでなく保温性も抜群です。
実用性も兼ね備えているカシミヤは、ひと昔前には「一生もののコート」としてこぞって買われたものです。
そして、カシミヤと似た特性を持つ繊維としてキャメルヘアーがあります。
キャメルヘアーとは文字通りラクダの毛のことで、ラクダもカシミヤと同じように寒暖の差が激しい砂漠で体温を保持するために保温性に優れています。
特に生まれて一回目の刈り取った繊維を「ベビーキャメル」と称します。
人間でも赤ちゃんの毛の方が柔らかいように、これも特に細い繊維ですから、生地の「ぬめり」はカシミヤに匹敵するほどです。
キャメルはカシミヤほど知名度がないからかあまり高価ではないのと、フェルト感が長持ちするのが魅力です。
スーパー200の生地でスーツを仕立てる。②
職人さんからの仮縫い上がりの連絡を受け 仮縫いに行ってまいりました。
ディラーの社長と打ち合わせ中のご連絡でしたので、社長にカメラマン役をお願いし二人で向かうことに。
道中、社長に「テーラーがスーツを仕立てに行くって、どいうこと?(笑)」
私が「マクドナルドの店員は毎日ハンバーガー食べるんですか?」 「フェラーリ屋がフェラーリを毎日乗らないでしょ!」
とのやり取りを交えつつテーラーさんに車で向かいました。
到着すると店の天井が漏水で雨漏りしたのこと。
心で「修理代の足しに、また一着作ろう」と思い。
着せ付けていただくと、全体的にはほぼ完璧でした。
私が「これでいいじゃないですか?」というと
職人さんが「早い!ちょっと見させて」と慌て顔(笑)
テーラーあるあるで、つい自分のスーツだとお客様のスーツと違いあまり気にしなくなりますね。
ちなみに案外、昔からの腕利きのテーラーでスーツを着て接客する人ってすくないものですね。
ブランドショップではなく、テーラーに定期的に通う方は、「外身より中身」という方が多い気がします。
「自分のスーツが良ければよい」という感覚があるのでしょう。
後から気付いたのですが、僕のスーツを仕立てている職人さんは半袖シャツ。
ジャケットはチェンジポケット、腰ポッケトの位置を微調整。
パンツは特に問題なく調整なし。
気分でサスペンダーボタンを依頼。
ベストは「襟みつ」「脇下」を1㎝ずつ出す、微調整で完了。
幅広のショールカラーということでラペルの返りを重視し、固めの芯地を入れることになりました。
V型のボタン配置のダブルのベストってデザインが難しいんですが、一発で満足な型が決まりました。
職人さんが製図で悩んで仮縫い予定が10日ほど遅れたとのこと。納期にうるさい今日、職人さんのスーツ作りが真剣だという証です。
お礼をしつつ店を出、お見送りまでしていただきました。
仕上がりが楽しみです。
Ermenegildo Zegnaご紹介
今回は、このゼニアについてご紹介していきます。
元は1910年にイタリアで生地メーカーとして設立されました。
ロロ・ピアーナと同じく、ミルの業態を取っていますが、原毛の厳選に特徴があります。
まず、ゼニアでは羊の脇と肩の毛、高品質な部分しか使いません。
ここだけでも贅沢ですがさらに細さと長さ、色、密度、強度を検査し厳選されたもののみが生地になれるのです。
そして基準に合わないものは使用しない、というところからも徹底したこだわりが窺えます。
実はゼニアにはSuper●●'sという表記がありません。
15milmil15(15ミルミル)が15ミクロンの原毛を使っているということから付けられたシリーズ名でSuper170's相当なのですが
こちらもあえてSuper表記をしていませんね。
というのも、原毛の検査項目を前述したとおり、細さだけでなく密度と強度もゼニアは重視しているのです。
以前紹介したロロ・ピアーナが女性的ならばゼニアは男性の筋肉のような雄々しさを感じさせる雰囲気で
見た目と実用性を兼ね備えたブランドだと言えるでしょう。
250gのオールシーズン向け。
「ハンガーに掛けておけば、翌日にはしわが取れる」と言われるほど、非常にしわになりにくい加工をした生地です。
名前の由来であり、出張(トラベル)が多い人向けに開発されたシリーズ。
高級感を持たせつつ、日常のビジネスシーンに限りなく落とし込んでいるため少しシャリ感があり、光沢も激しい主張がありません。
240gでオールシーズンむけ。
ゼニアの生地は軽いのですが、密度があるため肉厚でしっかりとした生地感で着ていてストレスがありません。
さらにSuper150'sクラスの原毛で織られた、なめらかな肌触りと艶があるため仕立て映えする生地です。
見ただけで高級感が伝わるためここぞというとき、目上の人から認められたいときにいかがでしょうか。
CARLO BARBERA(カルロ バルベラ)ご紹介
十五夜、中秋の名月を過ぎ、夏の激しさが和らいできましたね。
Corvoでもご成約の数と共に秋の訪れを感じています。
さて、今回は生地メーカー界でも並々ならぬこだわりをもったブランド、CARLO BARBERA(カルロ バルベラ)についてご紹介していきます。
バルベラは1949年、イタリアのピエモンテ州ビエラにて生地メーカーとして設立されました。
カルロ・バルベラの製品はゼニア、ロロピアーナ、デルフィノ、チェルッティと並んで五大生地ブランドといわれ、世界で高く評価されています。
また、ピエモンテ州では『バルベラ』という品種の赤ワイン用ブドウも多く生産されています。
日本では毎年ヴォジョレー・ヌーボーが人気となっていますが、本来は
温度、湿度を管理した蔵やワインセラーなどで数年から寝かせ、味のバランスを整えてから楽しむものです。
ワインとは生き物であり、さらに高級になればなるほど味は大きく変わります。
ときに、生地メーカーのカルロ・バルベラでは他社に見られない独自の、伝統的な製法があります。
買い付けた原毛を、その特性を引き出すため約7度の気温、75%の湿度に保たれた蔵で半年から一年ほど寝かせて
ウールにとって一番良い軟水を使いながら染色し、
効率重視でない、伝統的な機械でゆっくりと空気を含ませながら生地を織りあげています。
まるでワインのような製法ですね。
カルロ・バルベラも原毛がSuper130's~と細めなことから、マイクロチェック柄も得意です。
ポイントとしてトレンドの色を大胆に入れているため、イタリアらしい粋を表現した遊び心のあるデザインが豊富な事が特徴です。
また、チェック、ストライプというベーシックにこだわらない個性的な柄も多いです。
肌触りはなめらかでさらりとしており、上品にこなれた雰囲気を演出してくれます。
先日、バルベラも19AWの新作が入荷いたしました。
秋冬に向けたウール100%のふくよかでハリのある生地と、フランネル生地が多数おさめられたバンチは見ごたえがあります。
生き物のように、育て上げるように生地を作り出すカルロ・バルベラ。一度味わってみてはいかがでしょうか。
スーパー200の生地でスーツを仕立てる。①
ロロ・ピアーナから届きました。
ロロ・ピアーナの最高峰のコレクション「ゼニス」にある、スーパー200の生地です。
いままで、スーパー170を日常使いに、冬用のここぞの一着にゼニスのカシミヤ、ビキューナ混の生地を昨年に2着仕立て、通年用には次は何かと迷い、この生地に至った次第です。
これらの高価なスーツはテーラーが許される数少ない贅沢です。
せっかくなので、当店のフルハンドラインで作るものか、迷いに迷い フルハンドメイドラインの中でも最も上質な縫製にしようと、地場のテーラーさんにお邪魔しました。
何故、テーラーさんにお願いしたか、芯地などの細部にもこだわりたくなったからです。
あれこれと注文を付けるわけですから、意思疎通がしやすい、馴染みの地場のテーラーさんということになったのです。
去年はホワイトカシミヤのコートをお願いしています。今回で二度目の注文です。
前回のホワイトカシミヤのコートは賛否があるのは覚悟の上でしたが案の定、賛否が分かれました。(笑)
生地の色はともかく、ポロコートとしては最高の出来栄えでした。
ヘビーウェイトの生地でしたが着ると重さを感じさせないのは、首と肩に重さが分散して肩に乗っている、すなわち良い仕立ての証です。
この生地は驚くような軽くしなやかさ、肌触り、光沢、ドレープがある反面、撚りが甘く、コシがなく、毛羽立ちがあり非常にデリケートな生地です。
非常に扱いにくい生地です。 この生地を活かす仕立ては構築的な固い毛芯が相性が良いと考えました。
しかし、テーラーさんのご提案で「風合いを生かすあえて柔らかい毛芯はどうか」といわれ「お任せします」と一言。(笑)
今度、インポート物の毛芯を仕入れていただけることに。
ちなみに毛芯は縦糸はコットン、緯糸はウール、獣毛、化繊で構成されています。
この写真の毛芯は二層構造ですが通常の冬用の毛芯はフェルト、胸増芯、台芯と3層構造になっています。
(わかりずらいかもしれませんが冬用の毛芯は3層です)
一般に最高級のものは本バス毛芯といわれます。
バスは漢字で書くと馬巣です。 通常は胸増芯に馬の鬣(たてがみ)を使ったものをバス芯といい、馬のしっぽの毛を使ったものを本バス芯といいます。
特にベストはダブルのショールカラーにしたいのと、この生地で仕立てる上で毛芯を使いたかったからです。
通常、ベストはスレキまたは、接着芯を挟み、毛芯を入れるという事はしません。
夏場ジャケットを脱ぐことを考慮すれば、「ジャケットの代わりなるベストを」という事で構築的な物を注文しました。
テーラーさんと二時間ほど談笑してしまいました。 テーラー特有の苦労話とか(笑)、先輩としての貴重な経験談お聞かせ頂きました。 仮縫いが楽しみです。