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スーツの形のルーツ
イタリア、イギリス、アメリカ、日本のスーツは独特の形、シルエットがありますよね。また、その国の中でもいろいろと分類されたりと千差万別です。
ナポリ、南部イタリアのスーツは背中にゆとりを持たせる形のものが多いです。なんと言っても軽快で動きやすさを考慮したものが多いです。
逆に北部イタリアのスーツと言うのは前にゆとりをとり、全体に大きく見せようとするものが多いです。
イギリスは北部と似て、全体に大きく、貫禄があるように見せるスーツです。
どうしてそのような形に分かれたかと言うと、イギリス、イタリア北部は貴族社会で貫禄を出すための衣装作りが発達していたことにあります。ナポリは田舎町で農業を主とした服作りが発達していたと言う環境の違いがあります。
また、仕立てに関しても動きやすさを考慮してかナポリはダーツを使うことが多いです。紳士服はダーツを嫌う傾向にあるのでナポリの仕立屋に一概に当てはまるわけではありません。
かつてはナポリのスーツは田舎服として馬鹿にされることもあったそうです。今では有名イタリアブランドなどが挙ってナポリの形、ディテールなどを真似しているからファッションの価値観とは移り変わりが激しいものですね。
オーダースーツと言うのは仕立てのルーツを考えながらえばれるとより面白くなるかもしれませんね。
毛芯をお選びください
Corvoのオーダースーツは毛芯をお選びいただけます。
毛芯というのはジャケットの中に入っている芯のことなんです。
この芯の質が悪いと着心地、耐久性に色々な影響が出ます。
Corvoではイタリアの毛芯メーカーの中でも名門「ベルテロ」社の毛芯を使用しています。土台芯には綿にラクダの毛を巻きつけたキャメル芯、胸増芯には馬の尻尾の毛を織り込んだ本バス毛芯という最高品質のものを使用しています。日本でもここまでいい芯を使っているオーダースーツ店は限られています。
また、Corvoでは夏用、冬用と使い別けています。
冬は芯をしっかりと目の詰まった固めのものを使用します。そしてフェルトと言うウールを固めたものを胸の部分に入れます。フェルトを入れると胸のふくらみは出ますが、夏は暑いです。ですので夏は柔らかめの芯をいれ、フェルトのないものを入れ、涼しく軽やかにきていただけるようにお仕立てしています。
当然、夏でもカッチリされたい方にはフェルトありの固めの芯をお選びいただけます。私の「お客様に、オーダースーツなら芯まで選んでいただきたい」という要望で縫製工場が叶えてくださいました。(笑)
目に見えるディテールのみならず是非、毛芯に対してもご要望ください。
スーツの伝統への回帰傾向
私が愛読している「MENS Precous」「LEON」にもしきりに「伝統への回帰」が言われています。もともと両雑誌とも保守的なファッションを提案していたのにより一層、その傾向が強くなっていますね。
生地業者さんも二、三年はライトグレーの光沢ある生地が売れたのに今は紺、チャコールグレーにストライプというオーソドックスのものが動くとおっしゃっていました。
スーツのデザインに関しても以前みたいにステッチを色糸に変える、ボタンホールの色を一箇所だけ変えると言うような、装飾的なオーダーも受けなくなりました。お勧めできないので、お断りするのに苦労しました。
ビジネスウェアーのカジュアル化からの反動か、すごい速さの伝統回帰のように思います。
靴に関してはイタリアの靴のような尖ったものから英国の靴のような丸みを帯び、堅牢な靴が主流になりつつあります。英国靴ブランドの独壇場になりつつあります。日本では多少、日本の靴メーカーが知名度上げていますが基本的に日本の靴は英国に近いです。
以前、お客様に「Corvoのオーダースーツってイタリア調ですから靴もイタリア調のほうが良いんですか?」と言われました。特に問題ありません。雑誌を見ていてもキートン、ブリオーニのスーツにジョン・ロブの靴を合わせたりしていますね。「007」でも主人公のボンドがブリオーニのスーツにジョン・ロブの靴を合わせたと話題になりましたね。
スーツに関してはイタリアと英国のものが共存をし始めました。一時は「イタリア調スーツが駆逐されるのかな?Corvoも死んじゃうのかな?」っと思うほどでしたが。以前はイタリアのスーツにクレリックのシャツのような折衷されたものが雑誌に紹介されていましたが、傾向をみるとイタリアはよりイタリア、英国はより英国に独自のスタイルを色濃くなりつつあるように思います。
オーダースーツ店も今までの「何でもできるスーツ屋」から独自色を持ちブランドの地位を目指すようになるかもしれませんね。
シャツの袖型について
オーダースーツと違いオーダーシャツと言うのは選択肢が広く、楽しくもあり厄介だと以前ブログでご紹介させていただきました。
少しでもオーダーされる際にお役に立てばと袖型についてご紹介させていただきます。
袖型の選ぶ基準に付いてなんですが、大見得を切った割りは基準と言う基準はありません。個人的印象を交えながらご紹介させていただきます。
フォーマルな印象を与えたいのであればダブルカフスが良いでしょう。紳士服って装飾的なものがあまりありません。唯一、男性に許された装飾がカフリンクスといわれることもあります。
また、最近よく目にするカフスにボタンが二つ付いたものがあります。Corvoでは2ボタンと呼んでいますが、ミラノなどの北部のイタリアのシャツに多いディテールです。なぜか、袖口を斜めに切った角落ちの場合に多く見られます。個人的にはカフスにボタンが一つ余分に並ぶので体の小さい方や腕の短い方は腕が短く見えるので避けたほうがいい気がします。
また、袖口の切り方なんですが大丸といって丸くカットしたもの、角落ちと言って直線的に切ったものなどありますが、シャツ屋さん、他店のオーダースーツ店を含め今は角落ちが多いとのこと。既製では大丸が主流のようです。
大丸より角落ちのほうがすっきり見える気もします。
うまく、まとめられたかは不安が残りますが、選ぶ際にお役に立てば光栄です。
アメリカのスーツの傾向
Corvoのオーダースーツ、シャツはイタリア南部の仕立てを踏襲しているので関係はないと言えるかもしれませんが、アメリカのスーツの傾向についてご紹介させていただきます。
アメリカのファッションの傾向としては全体に大きめでサイズに頓着しません。
スーツに関しても各個人に合わせたオーダースーツと言うよりは大量生産の既製服が多く、画一的シルエットが上げられます。腰の絞りのないボックス型シルエットが特徴です。
また、人種的に肩があるためかパットなし、薄めのナチュラルショルダーのものが多いです。
ディテールとして鍵型のセンターベントがあげられます。
シャツのデザインで言えば襟の先にボタンが付いたボタンダウンがあげられます。また、こちらも全体にゆとり大きいシャツが多いです。色合いは濃い目のもの、柄としてはチェックのシャツなんかも多いです。
実はイタリア人もアメトラファッションを好むそうです。北部イタリアではその傾向が強いそうです。聞いた話では第二次世界大戦後の進駐軍の影響だとか。
イタリア南部と北部のファッション性
イタリアファッションって一括りにされがちですが南部と北部では大きな違いがあるとこのブログで御紹介してきましたが、改めてスーツに関するファッションの中でどう違うか大まかにご説明させていただきます。
先日、広告代理店の方と「南部と北部ではそんなにスーツに違いがあるんですか?」と言われました。
そもそも、日本でイタリアのスーツと一括りにされるのには南部のナポリのブランドがクラシコイタリアとして日本の雑誌などのメディアに取り上げられたのが原因です。ですので日本人のイメージするイタリアのスーツはナポリテイストの物が多いです。
ナポリと言うのはもともと、手縫いスーツの仕立屋が集積していて各仕立屋が独自性を保持しています。ですから「ナポリのスーツはこういうものだ!」とは言えません。ですが全体としての傾向があります。
傾向としては柔らかい毛芯を使い、パットなしまたは薄いパットの軽いスーツが多いです。
特徴的ディテールとしては袖にシワを寄せた雨降らし、重ねボタンなどがあります。また、袖の第一ボタンが袖口から4㎝前後のところつくというものがあります。
ミラノなどの北部はブリティッシュの影響を多く受けています。また北部は工業化が進んでいて既製服が多いです。こちらもブランドごの特徴もありあくまでも全体的特徴なのですが。
イギリスのスーツのように肩のパットが厚ついです。ナポリのスーツのような雨降らし、重ねボタンは少ないです。
シャツに関してなんですが南部より北部に行くほど装飾的傾向が強いとのこと。
イタリアのスーツ、全般に言えることはゴージが高く、胸ポケットが船底のように丸くなっている、腰のポケットが大きいです。最近は雑誌などを見ているとイギリスのブランドのスーツもゴージが高くなりつつあるようです。
先進国の物づくりは付加価値
いまのオーダースーツって国内縫製が売りになるほど縫製工場の海外移転が進んでいますね。
ちなみにとあるオーダースーツチェーン店はこぞって国内縫製を今季、大々的にアピールするそうです。
オーダースーツでも中国、マレーシア、既製のスーツならインドネシア、ベトナムなどの表記もみられますね。そうした海外なら数ドルがスーツ1着の縫製賃だそうです。以前、ブログで紹介したようにスーツの原価が3200円で出来る訳ですね。
国内縫製工場で、高級オーダースーツの縫製を担当しているところはいいのですが、格安店を担当しているところなどは今後、ますます苦しくなるでしょう。日本の縫製技術は世界トップレベルなのに値下げ要請のために仕立ての質を落とすところがほとんどです。
日本のような人件費の高い先進国の物づくりとは付加価値をつけるところでしか勝負できないと私自身、オーダースーツ業界に入って感じています。一時期、中国縫製の安さに押されたイタリアではその傾向が強いそうですね。
先日、生地の卸の方とお話をしていたら「Corvoさんは私が担当している中では出す方ですよ!新規店なのに頑張ってますね!」とお褒めの言葉を頂きました。Corvoでは一着当たりの粗利が少ないので頑張らなくてはいけないのです。(笑)
生地屋さんの話なら今、よく出すオーダースーツ店というのは仕立てにこだわったところだそうです。「安ければいい、ブランドならいいという時代から移りつつある」とのことを言っていました。本当にそうですね。
洗いざらしでシャツを着る
私は南部イタリアのファッションのこなれた感じが好きなんです。
ブリティッシュとは違い、堅苦しくなく自由気ままなスタイルが。私自身が根っからの自由人だからというのもあるからでしょうが。お客様のまえでその自由ぷっりが出ないよういつも努力しています。(笑)
ファッションはときに雄弁にその着る人の人間性を表しますよね。
英国人はその国民性の表れか、固く糊付けしてシワ一つないシャツを好みます。ナポリ人はその気ままの性格があらわれシャツにアイロンをかけず洗いざらしのまま着ます。
私もノーアイロンでシャツを着ていたら「なんだ!お前、スーツ屋なのに!」と昔からの知り合いの方に怒られ、こういったフッションだとといたのですが聞く耳を持っていただけませんでした。ノーアイロンのシャツの市民権はまだないようですね。
綿のシャツであろうと麻のシャツであろうとナポリ人は洗いざらしのシャツを好みます。彼らが着ているシャツは常に洗いざらしと言うわけではないのでご注意を。
Corvoもオーダースーツの受注ばかりでしたが最近はジャケットも出るようになってきました。スーツに洗いざらしのシャツは合わせにくいかも知れませんがジャケットにならチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
また、せっかく作られたオーダースーツの出番として、休日のお出かけの際、ノーネクタイでにチーフを挿してノーアイロンの麻シャツを着られてみてはいかがでしょうか?
あの人、「シワシワのシャツ着てる」と言われた際は申し訳ありません。(笑)
生地ブランド至上主義のオーダースーツ業界
昨今のオーダースーツ業界ではオーダースーツ自体の市場拡大、クラシコイタリアブームの影響で生地ブランドが知名度を一気に上げました。
以前ならゼニアを除いて、ロロ・ピアーナ、スキャバル、カノニコなどの生地ブランドというのは一般の方にほとんど認知されていませんでした。
そうした時代の流れの中で生地ブランドを前面に押し出しその価格の仕立ての安さを消費者にアピールするオーダースーツ店が多く出てきました。
当然、生地ブランドを重視し価格を抑えれば仕立ての面でコストカットが行われます。接着芯といった生地を殺すような縫製が平然と高級生地に対して行われます。
オーダースーツの厄介なところは縫製というのは一般の方には極めて分かりにくく、また実際に仕上がったものを着てみてみないと分からないということです。
着心地はもちろん、実際にいい仕立てのスーツかどうかは我々の業界の人間なら見たら大体分かります。一般の方なら「なんとなくあの人、決まっている」のような感覚的に認知し、印象にも左右します。やはり、ゼニアなどの高級生地で縫製がたいしたことがなければ高級生地の風合いが活かされず張子の虎です。
まぁ、ゼニアはいい生地ですが、個人的にゼニアは品質に対し値が高く感じます。こんなことを書くと他の業者から何か言われそうですね。
Corvoは仕立てあってのオーダースーツとしてこのオーダースーツ業界に参入いたしました。来店当初、「あっちではカノニコが5万円でここは高いな!」とおっしゃっていた、お客さまも私のしつこい縫製の説明、アピールなどに根負けしたのか今ではすっかり上顧客です。(笑)いまでは「Corvoのスーツでクローゼットを埋めたい!」と言っていただけます。
「仕立ての良し悪しをお客様に分かってもらうのは時間がかかる」とこの業界の参入する際、多くの業者の方に言われました。「縫製工場も工賃の安いところにしたほうがいいのでは?」と。
しかし、地道にお客様に毛芯等、副資材に対すこだわりを御説明してきた結果か段々と縫製にこだわるお客様がCorvoに付いてきました。また、リピーターになられたお客様もずいぶんと増えてまいりました。
「ここのスーツって着心地が違うな」「今までのスーツと全然違って作りがいいね」「そこまでこだわるなんてすごいですね!」と言っていただけるとCorvoの仕立てにこだわった、コンセプトは正しかったように思います。
Corvoでは今後とも顧客様を絶対に裏切らないよう縫製の質をおとすことなく上質のスーツを提供していきます。
イタリアファッションとブリティッシュファッション
今のオーダースーツ業界を先導する立場にあるのはセレクトショップだと広告代理店の方がおっしゃっていました。
どこのファッション雑誌も「ビームス」「ユナイテッドアローズ」「シップス」のオーダースーツの特集が組まれ、その流れに沿って各オーダースーツ店、ブランドが追随する形がオーダースーツ業界で出来上がっているとのこと。
また数年前までクラシコイタリア全盛であったものが今ではブリティッシュが入ってきて一時はクラシコイタリアを駆逐する流れがなぜか共存し始めたとのこと。
雑誌でも当月はイタリア特集、翌月はブリティッシュという組み方がなされていますね。
あのイタオヤの言葉の産みの親とでもいうべき「LEON」でさえ近頃はブリティッシュファッションを特集で組むことさえありますね。
なんだかオーダースーツと今まで一括りにされてきたものがこうしてブランドごとのコンセプトが理解し始めるというのは業界に携わる人間としては喜ばしいことですね。