大阪店
ディテールではスーツの良し悪しを測れない
「よいスーは?」ツという問いにたいし、案外、ファッション雑誌編集者、このアパレル業界に身をおく方でも意外にもほとんど明確に説明できる方はいません。
ボタンが水牛、袖が切羽、襟ひげがあるなどディテールに関してはいえる方は多いですがあくまでディテールは細部の問題でスーツの構造上の良し悪しの本質をついていません。
海外の最高級ブランドはこうしたディテールは施されていることが多いですが、日本人が気にする台場、襟ひげなどのディテールが施されていない場合も多いです。
日本ではファッション雑誌などの宣伝媒体が発達しているので多くの方々こうしたディテールに知識があります。また、雑誌はブランドの宣伝媒体ですからポジショントークになるのはいたし方ありませんね。
Corvoでは水牛釦、切羽、台場、襟ひげなどのディテールは施されていますから、ディテールが凝っているから良いスーツと言っていればいいのですが、それではお客様に対して正直ではありません。(笑)
本来、スーツと言うのはそのシンプルなデザインにシルエットの美しさを楽しむものですからディテールはあくまでもちょっとした付加価値とお考えください。
英国生地への移行
日本ではまだまだイタリア生地が主流ですね。
しかし、最近は雑誌などの宣伝媒体のブリティッシュ押しの影響でテーラー、オーダースーツ店でもイギリス生地の品揃えが徐々に増えてきました。また、イタリアの生地ブランドでも堅く、ハリがある英国生地に近いものも出てきています。
日本では光沢のある生地が人気です。
多くのテーラー、セレクトショップ、オーダースーツ店で取り扱いのあるゼニア、ロロ・ピアーナ、カノニコ等の高級イタリア生地は光沢が強いです。ですから良い生地=光沢の強い生地と認識されているようですね。
2、3年前から英国調のチョークストライプ、ペンシルストライプなどの柄のイタリア生地で仕立てたスーツがセレクトショップに多く吊るされています。最近では英国生地へと移行しているようですね。とはいってもまだまだ柔らかさを残したイタリア生地よりの英国生地が多いように感じます。
英国生地の重みとハリのある感触は夏物より冬物のほうがその特性を楽しめます。気が早いようですが私も来季、一着仕立てようと思っています。
夏はリネンシャツ
先日、夜更かしをしていたらNHKのテレビ番組「美の壺」で「麻」の特集が組まれていました。
そこでも紹介されていたのですが麻は肌に張り付くことなく、通気性に優れ、且つ何年も使えるとのこと。
通常、シャツ、ジャケット生地に使用される麻は亜麻という麻の一種です。その亜麻で作られた製品をリネンといいます。
リネンシャツは夏は涼しく大変気持ちのいいものです。通気性がいいのと同時に透け感もありますので直接肌にシャツを着られる方は乳首も肌が透けます。(笑)男の色気と割り切りましょう。
またリネンシャツは耐久性に優れ、十年以上持ちます。「美の壺」でもやっていましたが100年前の麻の製品は今でも現役だそうです。
むしろ使い古した方が味が出ます。経年の変化で風合いがで、柔らかくなります。使用し始めはチクチク肌を刺すように若干痛いのですが、洗濯を重ねるたびだんだんと肌になじみます。チクチクが気になる方は着る前に一、二度洗濯したらいいかもしれません。
また、アイロンなしで洗いざらしで着ることもでき楽で自分みたいな面倒臭がりは夏は常にリネンシャツです。
以前は麻でオーダースーツなんてのも一般的でした。Corvoでもお客様が麻でオーダースーツをご注文されました。「涼しいですね。夏は麻しか着れなくなるかも」とご満悦の様子でした。(笑)
(リネンシャツ)
(亜麻の花)
LANIFICIO DI TOLLEGNO
知名度はなくても質のいい生地を作り出す生地ブランドは多くあります。
その一つとしてアルマーニ・ヴェルサーチ・ドルチェ & ガッバーナなどの最高級デザイナーズブランドを主要な取引先として持つLANIFICIO DI TOLLEGNO(ラニフィシオ デ・トレーニョ)があります。
創業は1900年で、ロロピアーナ社が一流デザイナーズブランド向けに設立した紡績メーカーです。
質はいいのはもちろんのことトレンドを意識した色、柄のもの多くそろえています。
価格はシングル 2p オーダースーツでお仕立て価格も68000円(税別)と値段も手頃ですが、品質は一流ブランドから評価を得ていることが頷けるものです。
あまり他店のオーダースーツ店などでは取り扱っていませんね。ですから存じていない方も多いのではないでしょうか?知名度、価格、ブランド名に惑わされず良質の生地を見つけてみてはいかがでしょうか?
細身のパンツ
細身のパンツをと注文される方が多いです。
一般にオーダースーツ業界の中で細身と言うのはクライアントの体の実寸(ヌード寸)に仕上がったスーツのゆとりの少ないことを言います。
細身にしただけでは脚は細くは見えません。またスーツと言うのは上下のバランスで一つの型を構成しています。ただ単純にゆとり量を減らすと全体のバランス、また動きやすさを損なってしまいます。
細身のパンツをと注文されるお客様のほとんどは「脚を細く見せたい」「長く見せたい」という要望があります。
細くパンツを仕立てると、人しゃがんだときに太ももが大きくなり生地を引っ張られます。ある程度のゆとりが必要となります。他店、他のオーダースーツ店は単に細くしているように思えます。被服というのは動きやすさ着る人の着心地を考えなくてはなりません。
動きやすさも考慮しゆとりを加えつつ、「脚を細く見せたい」「長く見せたい」の要望をかなえるにはお尻からひざ巾から裾巾に行くにつれて細くなるテーパードラインです。
更に後ろ股上を上げるとより一層脚長効果が期待できます。
ブレザーは巡洋艦の名前?
紺色のジャケットに金属釦をあしらった物をブレザーと呼びますよね。
そのほかにもスポーツ選手が着る赤などの原色のもの、胸にエンブレムが付いたものなどなど色々ありますね。
ブレザーの語源はヴィクトリア女王から観閲をうけた際、巡洋艦「ブレザー号」の水兵がダブルのネイビーブルー(濃紺)に金属釦が付いているジャケットを着ていたからと言われています。(諸説あり)
ちなみに濃紺をネイビーと言うのはイギリス海軍の制服の色が濃紺だったからです。
最近、よくブレザーについてのお問い合わせをよく頂きます。
イタリア人は淡いブルーのブレザーをよく着ます。どうしても濃紺だとフォーマルな印象が強くなります。カジュアル、フォーマルでも使いまわしたい方にはお勧めです。
また、コットン、ジャージ素材なんていう選択もありですね。
パンツ素材も様々な生地をご用意しています。
Corvoではオーダースーツ以外にもジャケット、パンツのオーダーも承っていますよ。(笑)
立体的に仕上げる
「パターンオーダーでアイロンワークをしているところなんてありませんよ。」とこないだ営業に来た方に言われてしまいました。同じオーダースーツ業界でも一部のパターンオーダースーツがアイロンワークを施していることを存知てない方が多いようですね。
一般にパターンオーダースーツと言うのはフルオーダースーツと違い平面的だと言われます。ネット、雑誌などの情報媒体にもそう紹介されていることが多いですね。
ウールと言うのはアイロンの熱、蒸気で形を変化させることができます。スーツ作りで重要なのはそのアイロンワークと言う作業です。
アイロンワークは人体に沿うように縫製段階で生地にクセをつけます。そうすることによって胸の綺麗なライン、腰の綺麗な絞りを形成します。
フルオーダースーツは総じてこの作業が行われます。(フルオーダースーツと名乗っていてもパターンオーダーに仮縫いをつけただけのオーダースーツ店もあるのでそうしたところでは往々にしてアイロンワークはなされていません。)
パターンオーダーの場合は価格、工賃、人件費、納期の問題からほとんどの工場ではなされていません。
Corvoの担当縫製工場の他に「ALDEX」、既製のスーツなら「リングヂャケット」などごく一部の業界トップクラスの縫製工場では工程がなされています。
ちなみにCorvoの担当縫製工場はこのアイロンワークにおいて業界一番の技術があると定評があります。フルオーダースーツより仕立て栄えのするスーツと高い評価を得ています。
お勧めの生地ブランド
「CANONICO(カノニコ)」は人気ですね。どこのブランド、セレクトショップに行ってもカノニコの生地のスーツばかりです。スケールメリットを活かしコストパフォーマンスのいい生地を提供しているのでそれが各ブランドに支持されているようです。
「他と同じ生地は嫌だ」と言う方にお勧めなのが「John Foster(ジョン フォスター)」です。
正直いってあまり知名度がないのかCorvoでは不人気な生地です。他のオーダースーツ店でも同じようです。(笑)
知名度に対して作り出す生地の品質はきわめて高く、昔ながらの製法にこだわった生地に業界の中では定評があります。隠れた名生地ブランドとしてお客様にお勧めしています。
また、柄も英国生地にしては色糸を使ったストライプのものなど配色に富んでいます。
2Pオーダースーツ お仕立て価格で68000円(税別)と値段も手頃です。
生地の特性
オーダースーツ業界、アパレル業界というのは、ブランドの知名度、価格と品質が一致しないものです。また生地ブランドも同じことが言えます。
スーツの仕立栄えのいい生地と言うのがあります。特に既製品のスーツを扱うブランドはトレンドの柄、色合い以上にその生地選びに熟慮します。既製品はハンガーにかけた状態がきれいであるということが求められます。
一般にイタリア生地と言うのは柔らかく、コシがないものが多いです。柔らかいですからミシンの針を通す圧力でさえピーリングというシワが出たりします。(Corvoのオーダースーツは縫う際、紙を挟んだりして対処します。)
イギリス生地は堅く、ハリがあります。ですからピーリングはまず出ません。また、ハンガーにかけてもシワが出にくいです。
ですから既製ブランドは数年前までイギリス生地を好んでいた傾向にあります。今はクラシコイタリアブームの影響で柔らかなイタリア生地が好まれ、イギリス生地の既製品はあまり見ないですね。
夏物生地で仕立てた場合、対処をしていてもイタリア生地は薄く、柔らかくなるのでピーリング、着用時にシワが出やすくなります。
イギリス生地も夏物は薄くなるのでシワは出易くなりますがイタリア生地ほどではありません。
オーダースーツは出来上がってみないと仕立てた際のものが分かりませんよね。私のような店員と生地の特性を考えつつ生地選びをされてみてはいかがでしょうか?
ブルーはスーツの基本色です。スーツ生地というのは基本は青と灰色です。
黒だと思われる方もいますが海外では濃紺が主流です。日本はなぜか黒のスーツも多く出回っていますよね。
Corvoでも六割ぐらいの方が青色のオーダースーツを注文されます。
よくお客様に「ブルーのスーツは持っているからグレーの生地を!」と言われるのですが、生地の濃淡でも印象は違います。
(カノニコのホームページから)
上と下のスーツでは印象が大きく違い言いますよね?
今までは下のような黒に近い濃紺のスーツが多かったですが、今の流行は上のような明るいブルーが流行です。
イタリア人はアズ―ロといい明るい青色をよく好みますね。特に夏に明るい青のジャケットは鉄板ですね。
「ブルーは持っているから」とはおっしゃらず色の濃淡でオーダースーツ選びをされるとワードローブもより多彩になりますよ。