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ストライプ(オーダースーツの生地の選び方)
スーツやジャケットの生地といえば無地、ストライプかチェックが一般的です。
一言にスーツの柄と言ってもストライプにもいくつか種類があり、チェックにも種類があり印象を大きく変えます。
一般に無地は最も無難なものとして扱われます。特に海外では濃紺の無地はフォーマルなものとして扱われます。
ちなみに高度成長期は日本のサラリーマンがグレーの無地のスーツを好んできていたことから「溝鼠」と海外の方から揶揄されていたそうですね。お客様に教えていただきました。
ストライプは無地よりもカジュアルにはなります。時折、ビジネス使いに大丈夫かと気にされる方もいますが会社の社風にもよりますが、問題ありません。
アメリカなどのエリート銀行員は好んではっきりした縦じまに縦じま同士の幅1cmほどのストライプのスーツを着ます。それから「バンカーストライプ」といったりします。相手に信頼感、知的な印象を与える柄とも言われています。
現在の流行で言うとこの「バンカーストライプ」が一般的ですね。流行と言っても昔からある柄なので廃れることはなく今後もあり続ける柄です。
ストライプははっきりすればするほど間隔の幅が広くなると男性的な力強い印象になります。反面、カジュアルな印象にもなり着る場面を選びます。
ちなみに体型にも幅を気をつけなくてはなりません。100kgを超える人と50kgの人とでは体の横幅が違います。同じ間隔のストライプを乗せてみても印象は変わってきます。
雑誌を見てこんな柄のスーツをと注文されても出来上がると印象がちがうのはそうゆうことです。
(ボタンフライ)
最近、ちょっと変わったオーダーを頂きました。「ボタンフライにできますか?」と。
昔はチャックがなかった時代は写真(ジーンズに施されたものですが)のようにボタンで前を留めていました。
現在でも老舗テーラー(特に英国の仕立屋に多いような印象があります)のオーダースーツなどに時折クラシックなディテールとしてスーツに施されたりします。
スーツやジャケットに合わせるスラックスなどよりもジーンズがこの仕様になっていることが多いですね。
今は使い勝手のいいチャックが一般的ですが、クラシックな雰囲気を楽しみたい方は尾錠、サスペンダーボタンと併せて仕立ててみるといいでしょう。こうしたディテールに拘れるのはオーダースーツならではですね。
ただし、馴れてないと掛け損なったり、閉め忘れることがあるので注意が必要です。(笑)昔の日本軍の将校がシベリア出兵の際にボタンを閉め忘れいて寒さで凍傷で男性にとって一番大事なものを切断するという笑うに笑えない話もあります。
(サスペンダーをした男性)
ちなみにサスペンダーについても少し。
サスペンダーは最近、注目を浴びています。その理由は英国調の流れです。サスペンダーは英国紳士のシンボルのようなものですね。
もしサスペンダーをされるのなら股上、後股上を深めにし、ウェストにいつもよりゆとりを持たせるといいでしょう。
肩はこるのですが、、パンツを持ち上げるサスペンダーはパンツのラインを綺麗に見せる効果がありお勧めです。
サスペンダーは人前で見せてはいけないというルールがあるのでジャケットを着ていなくてはいけませんので秋冬のスーツ、パンツにお勧めです。
昔はスリーピースにはサスペンダーをというルールはありましたが今はベルトでもいいようです。
ベルトのバックル(金具の部分)でジャケットのお腹が膨れるのが嫌だという方はどんな時でもサスペンダーをされます。
古い型と伝統的な型
オーダースーツを作られる上で生地や縫製も大事ですが型、シルエットも重要で欠かせませんね。
Corvoの型紙は正統派で古いといえば古い型です。
具体的にどういった型が古く、どういった型が新しいのかについて説明します。
まずはアパレル界(スーツ業界)に置ける古いの定義と伝統的(正統派)の違いを説明しなくてはなりません。
アパレルの古いのは流行に遅れたもののことを指します。
たとえばバブル期の大き目で肩幅の大きいジャケットは当時は流行の最先端でした。最近では三つ釦の、タイト目で着丈の短く襟巾の細いスーツ。アパレル界では流行に乗ったものを今日的といいます。
流行に乗ったものは当然、流行り廃りがあります。現在、バブル期のようなスーツを着た方はほとんどいませんよね。
細い襟巾も現在はだいぶ少なくなってきましたね。一時期はホストのようなスーツをビジネスマンが着てましたね。
多少は時代ごとに変化はありますが伝統的とは古くからある、正統な物を指します。(伝統は時代の連続の中で存在しますから、時代の影響は受けます。)
イタリアのスーツというのは(特に南部)、ブリティッシュの老舗テーラー、老舗ブランドスーツの型というのはあまり変化がありません。
たとえば五十年近く前に公開されたゴッドファーザーの登場人物のスーツは現在の感覚で見てみても廃れ、古臭いという印象を覚える方はごく少数だと思います。
ゴッドファーザーはイタリアのシチリアのマフィアの話で登場人物の大半が南部イタリアの伝統的な形のスーツを着ていて、今なおスーツ好きの方には高い人気があります。
今の流行は伝統的スタイルに集約しつつあるようです。数年前までのカジュアル化に対する大きな反発のようにも感じます。
ちなみにアパレル界は高価格帯のブランドになればなるほど型も伝統的になる傾向にあります。それは買い替えが安価の物より容易ではないので長く使えるようにという意味合いがあるようです。
また不景気になると使い回しの利く伝統的な型、色合いの被服が売れるようになるそうです。現在のスーツの伝統回帰もそのような事情があるかもしれませんね。
特に女性服にその傾向が強いようです。女性服は流行が紳士服より大きく、一着あたりに縫製にお金を掛けるより一着当たりの単価を抑え数を買ってもらう意味合いがあるようです。
デザインブランドのスーツもその傾向がありますね。アルマーニ、ボスなどの二十万前後のスーツと老舗テーラーのスーツとの縫製は雲泥の差があります。
ネクタイについて
少し前まで細いナロータイがトレンドでしたね。それに併せて襟巾の細いスーツ、襟の小さいシャツが多く見受けられました。
ネクタイの幅は7~9cmが一般的でそれよりも細い物をナロータイといいます。
ネクタイを選ぶ際はジャケットの襟の大きさに合わせるとおさまりがよくなります。細い襟の物にはナロータイ、巾広の物には一般的なもの、太めの物がよくあいます。
最近のトレンドは巾広の襟のジャケット、スーツ、襟の大き目のシャツですからネクタイも太くなっていますね。
ちなみにナロータイは顔が小さい方でないと顔が大きく見えるので注意が必要です。(笑)
ところでネクタイの起源を御存知ですか?
クロアチアの兵士が首に巻いていたスカーフが起源という説が一般的ですね。彼らの恋人、妻、家族が無事を祈って贈ったといわれています。また、兵士がスカーフを巻くスタイルも広く一般的になり第一次世界大戦までそのスタイルは広く継承されます。
もとは兵装ですから部隊の柄によって識別に使われ、今でも柄によって帰属す組織、集団(会社、スポーツの選手団、サークルなど)を表すこともあります。
今のような形のネクタイになったのは19世紀頃のイギリスと言われています。
オーダースーツを知る~ポケット位置~
胸ポッケト位置なんですが、5,6年前のスーツに比べ下がってきています。
詳しい方なら、その当時はクラシコイタリア全盛で低くても良いような気がするでしょう。
もともと、イタリアのスーツはイギリスのものより2,3cm低めの場合が多いです。 イタリア人はチーフを挿す際に2,3cm、イギリス人より多めに出すからとも聞いたことがありますが低めです。
ポケット位置は着丈を基準に三等分した位置にそれぞれ胸ポケット、腰ポケットとなります。それより高い位置にあれば高めといいます。
なぜ5,6年前のスーツはポケット位置が高かったと言いますと三つボタンのスーツが全盛でした。
ボタンをかける位置が高かったので重心を高めにするためにバランスをあわせるために高めに設定されていました。
オーダースーツの流行~着丈~
世界的に見ても現在は着丈は短めのものが流行だとのこと。
細い襟と短い丈、細身のパンツは以前のスーツのトレンドでしたが襟巾太目、太目のパンツが今のトレンドになりつつあるようです。
一般にブリティッシュ調のスーツは長いと言われますが、様々なスーツを見てきましたが個人的は国ごとによって違いはないように感じました。1930年代は短めのものがイギリスで流行したそうですから、時代によるところが大きいと感じます。
着丈の基準はお尻が隠れる程度、第七頚椎(背中側の首の付け根の骨)からかかとまでの半分、(身長-24cm)÷2、親指の第一関節付近と言われたりもします。
ちなみに私は胴長なので基準どおりに作るとお尻が丸出しになってしまいます。(笑)実際には個人の体型と全体のバランスを元に決めるのが良いでしょう。
バランスをつかむコツは鏡から4メートルほど離れてみると良いでしょう。あまり近くで見ていると全体のバランスをつかめません。
服飾評論家の落合正勝氏は重めの生地のほうが長めの丈があうともおっしゃっていました。また、恰幅のいい方は長め、細身の方は短めがバランスがいい気がします。
Corvoのオーダースーツの型の特徴
格好いいでしょう?(笑)型紙を引いたのは自分ではありませんがお客様に自信をもってお勧めできるシルエットです。
Corvoの型紙は十年近く前にクラシコイタリアのスーツを縫製工場のパタンナーの方々が研究を重ね作られたものなんです。時には市価、数十万円もするようなスーツをばらしたりしながら。
クラシコイタリアは長い期間を経て成熟した、伝統的イタリアスタイルなので現在の感覚で見ても古さを感じさせません。
イタリアを代表するブランドもおおよそこの形を継承しています。
主な特徴としては高いゴージ、広い襟巾、高い位置の自然な腰の絞りです。型を口頭、文字で表現するなんて野暮ですね。「見て感じてください!」(笑)
また、腰の絞りはお客様の体型、要望で変更させていただきます。最近は少しシワが出るぐらいの絞り目が流行です。それもブリティッシュ調の流れからでしょう。
細々したところでは袖先から4センチのところに第一釦があります。イタリアのスーツはイギリスのスーツに比べ袖先から離れた場所に釦が付くそうです。理由は分かりません。
super表記と生地の質
生地を見ているとsuper100(スーパー100)と言う表記を目にしたりしますよね。
これは原毛の細さを表します。
Super100なら18.5ミクロンで、10表記があがると0.5ミクロンづつ細くなります。
例えばsuper120なら1ミクロン細い17.5ミクロンと言う意味です。
一般に原毛が細いと高品質といわれています。
オーストラリア産の原毛の平均が24ミクロンと言われています。また、全世界の羊毛の生産量のsuper120以上のものが5パーセント未満と言われています。細くなればなるほど希少な素材と言うことです。
あくまでもsuper表記で知ることができるのはあくまでも原毛の質で生地の質ではありません。
細い原毛であっても生地に使う量を減らすには打ち込みを甘くすればいいのです。(打ち込みが甘い=単位面積当たりの糸の本数がすくない)
同じ生地ブランドで値段が同じでもsuper表記が違う場合が多々あります。それは加工の違いもありますが、使用する原毛の量の違いが大きいです。
中にはsuper80前後の最高級生地もありますので一概にsuper表記が低いからと言って悪い生地とはいえません。逆も然りです。
オーダースーツを知った玄人好みの生地(タリア・デェルフィノ)
知名度がなくとも質が高い生地はたくさんありますよ。
例えばイタリアのミルブランドのタリア。デェルフィノです。
Corvoでは人気が高い生地ですが、他のオーダースーツ店では知名度がないせいもあって余り人気はないそうです。
ちなみにビームスかユナイテッドアローズかでこの生地を使った既製のスーツが売られていました。セレクトショップは専属の企画部があるのでなかなか、流石によい生地のチョイスだと感心しています。(上から目線ですいません)
タリア・デェルフィノはビエラ地方で1903年創業の老舗です。
ミルとしての技術は業界の中でも定評があり最高品質の生地のみを作ります。とくにプレタ(既製服)ブランドからの評価が高く、ブリオーニ、キートンなどの一流ブランドに生地を提供しています。
近年ではリネン素材、コットン素材などの多彩な生地を提案しています。
素人受けするものというよりも玄人好みの生地です。
柄も定番のものから、捻りの入ったものも多く、価格も品質に対して非常にいいので私自身も特に気に入っている生地ブランドです。
オーダースーツ業界に対する愚痴
愚痴っぽくなるのですが、この業界は業界人でさえ先入観でスーツの仕立てを語ることがままあります。仕立てにほとんど理解が及んでいないのが実情でしょう。
アパレル業界は値段があってないようなものでブランド品、百貨店で売られていたからといって品質を保証するものではありません。
業界の方でCorvoのスーツを見てパターンオーダーの場合は袖を後でつけるところがあまり多くないので、ねじれがでているところが多いとの先入観でねじれているとと指摘されたことがあります。(苦笑)Corvoの場合は後付けですので、人の手による作業ですのでごく微量のずれは出ますがねじれはでないのに。
オーダースーツ業界の方でも仕立てについてわかっていないなんて。それで「いいのか」と思うことがままあります。
一般にパターンオーダーは機械で裁断するため、特にチェックの場合、柄がずれることがあります。業界の方にもCorvoのスーツを見てズレていると指摘されました。
Corvoの場合は手裁断によって職人が丁寧に柄を合せていますので寸法の関係で多少の柄がずれることはありますがミリ単位に抑えています。
いいことばかり言っていてはいけませんね。Corvoのスーツにも弱点はあります。接着芯を使用してないので一般的なパターンオーダースーツに比べ雨が降るとシワが出やすい。また、天然素材を使用しているので稀に表地から飛び出すことがあります。
また、納期も手作業、またインポート生地の水分量の安定などで一か月前後かかってしまいます。
販売員の方でも毛芯について存知ていない方がおおいのもこの業界です。
「通常、夏物には毛芯は入っていないですよ」といわれたことがあります。さわって見てどう考えているのに毛芯が入っているのに。
この業界の問題は仕立てを理解していない経営陣が縫製賃の安い工場に仕事をまわし、仕立てにこだわったスーツがどんどん廃れていきます。
やはり仕立てにこだわるとコストはかかります。しかし、それには当然、付加価値はあります。
当然、安さを追求することも一つの別の消費者の方にとっての価値です。(我々の業界は安価なものを売るブランド、店をつい否定しがちですが、それも一つの価値と私は思っています。)
お客様も高い買い物をするのにろくに安い商品との違い、付加価値を説明もできない販売員を信用できませんよね。
また生地もブランド名だけで大した質もないブランドが蔓延っていますね。そんなにブランドにお金をかけなくてもいい生地はあるのに。
高価なものが売れない時代といいますがオーダースーツ業界に限っては売り出す側の勉強不足のように思えてなりません。業界に身を置く一人として私自身もお客様の立場にたち身の振り方を考えなくてはなりませんね。