コルヴォ名古屋・大阪ブログ
ダブルについて
景気が良くなると大きな服が流行になるといわれている。
潜在的に生地をつかう量が多い服はリッチと印象付けられているようだ。
かつて弱小国のプロイセン軍の軍服は小さいものだった。それは生地を使う量を減らし軍服のコストを下げるためだった。
だからダブルのスーツは、景気が良くなると注目され、またリッチな印象を与えるのかもしれない。
ダブルブレストのスーツにはクラシカルなものが似合う。
オルタネイト、バンカーストライプ、へリングボーン、グレーンチェックなどは高相性だ。
特にオルタネイト、バンカーストライプは最近のバンチなどでは、取り扱いが少ない。十年前であれば、オルタネイト、バンカーストライプは定番だった。
最近のダブルの人気で再び注目されつつある。
ちなみにダブルのスーツはほとんどのショップで雑誌などのイメージでオーダーしても思い通りに上がってこない。
ほとんどのパターンオーダーの縫製工場では二十年前の型紙をそのまま使用している。
着丈が長めに設定れており、今の着丈のサイズ感で上げるとVゾーンが狭くなる。また総じてゴージ位置も低い。
一般的にダブルブレストは総毛芯で作るのだが、重くなりがちなダブルを軽快に着こなすには芯なしで作ってみるのもありだ。
リザードの靴
リザード(トカゲの革)の靴は、今までほしいと思いながら、なかなか挑戦しにくかったが、先日購入した。
独特の凹凸(腑という)のリザードの革は時計のベルトなどでたまに目にする。
リザードは組み合わせ次第ではいやらしくもなる。着こなしを熟知した上級者向けの品だ。
「やはり仕立屋なら一足は」と今回購入した。
Corvoの莞爾、奉文をはじめとしたピークドラペルのフォーマルなスーツにはリザードは高相性だ。ダブルブレストのスーツならばより高相性だ。
購入するまでの想像よりも、合わせの難しさはかんじなかった。
むしろ、履き心地は柔らかく牛革に比べ抜群に良い。
また、リザードは漂白してから後染めするため、発色の良さと他にはない光沢がある。
最近はさらにアク(笑)の強いクロコダイルのものに挑戦したいと思っている。
セラピアンを使用してみて
今回、「セラピアン」の入荷に合わせ、私用にキャメルのシボ革の2WAYのバッグ、ボストンバッグを仕入れた。
セラピアンのブランドとしての紹介は多くの媒体でなされているので今回は使用したレポートを綴る。
以前は仕事柄、書類、本などの荷物が多く普段からボストンバックを使っていた。普段使いにはボストンバッグは移動の際に大きく不便で荷物の多くはいる2WAYのものにした。
型押しの革(カーフを型押ししたもの。「エヴォリューション」)は傷が目立った。当然、革製品なのでなのでクリームを塗れば消えるのだが。
シボ革は傷が目立ちにくい。指でこすれば、一目ではわからないぐらいに目立たなくなる。
個人的には革製品に傷はつきものと割り切っているが、気になる方はシボ革の製品を選んでみるといいかもしれない。
以前、紹介したがシボ革は経年変化を楽しむことができる。革製品は傷を楽しみながら使うのが本来の使い方だ。
ビジネスバッグとなると黒が基本だが、ブラウン、グレー、キャメルなどの選択もありだ。
簡易的に良い革が使われているかどうかは、鞄を置いたときに自立するかどうかでわかる。
良質な革は柔らかいが、直立したように形状を保つ。店頭で鞄を見せてもらうとこれでもかと紙が詰まっている。質の良くない革のものは、自宅に持ち帰ると拉げている。
当然、「セラピアン」の製品も自立する。物を入れても入れなくても形状の崩れがない重要だ。
他の「セラピアン」の製品と同様、内部は人工スエードのアルカンターラ、ジッパーもパラジウムの鏡面磨きされたものを使っている。
質感に申し分はない。
コートの楽しみについて
冬が来るのが楽しみなスーツ好きは多いと思う。
コートの季節だからだ。
最近のコートはカジュアル色の強いデザインのPコート、ポリエステルなどの機能を重視したものもある。
スーツに合わせるとなると、素材、デザインにおいても流行に左右されない定番のものが好ましい。
コートというのは末永い付き合いになるということを前提に選ぶべきだ。
ちなみに袖は長い期間の使用で擦り切れることを想定して、手の甲を覆うぐらいの長さにする。
丈は短い物ではなく、長い物のほうが優雅である。
上質な生地で仕立てる場合、肌に密着したフィッティングではなく適度にスーツとコートの間に空間を持たせた方がドレープが生まれる。
カシミヤのコートは新品の状態では光沢がありすぎて悪目立ちしてしまう。空気を含みフェルト状になる、経年変化を楽しむのが本来の楽しみ方である。
胸ポケットにはやはり、革手袋を挿すのが良い。
革靴
革靴の選び方について。
靴店のスタッフは、サイズ、手入れの方法などの選び方に熟知したスタッフは多いが、意外にスーツとの関連性から革靴を語れるスタッフは多くない。
スーツと革靴の相性は非常に重要である。
逆にスーツ店のスタッフはスーツを語れても、革靴を語れるものは少ない。
そんな事情の基で、当ブランドでは定期的に取り扱っていない商材についても研修を行っている。今日はその時の内容の一部を紹介する。
私の私物のリーガルの上位ブランドの「シェットランドフォックス」の二足だ。「シェットランドフォックス」は量産の日本の革靴の中で最も品質に優れている。
英国靴の「クロケットジョーンズ」「エドワードグリーン」に匹敵する品質と言われている。日本人向けの甲の高い木型があっていて私は好んで履いている。
個人的意見だが英国靴は往々にして店頭に並ぶ段階でエイジング加工がされているが、日本靴はなされていない。履きこなすと味が出てくるが、魅せ方に売れ行きに大きく関係していると思う。
特に右のものは足に合っているのと、シンプルなシルエット、どんなスーツにも合う色味が気に入っていて出番が多い。
一般に裾幅の広いものはコバの張り出しが大きいく、丸っこいシルエットのものが合うとされている。裾幅が狭いものは、細いシルエットのものが合うとされる。
Corvoのパンツは裾幅19㎝が標準仕様だ。一般的には20㎝が標準とされ、標準より気持ち狭い。標準的なシルエットの「ラウンドトゥ」のものを推奨している。
形的に標準的な「シェットランドフォックス」、「カルミナ」などのやや線の細いものでも合わせやすい。
ちなみに外しの例だがロロ・ピアーナはスーツにデッキシューズを合わせる。代表がヨットが趣味で、ロロ・ピアーナのアイコン的組み合わせとなっている。
最終的に靴選びは好みになるが基礎を知った上での靴選びでなくてはならない。
キャメルのコート
近年の流行は丈の短いものだった。
Corvoでは長らく、ロング丈のものを提案してきた。
私は身長168㎝だが110㎝のものを愛用している。
今まで好まれた軽量の生地から、正統なコートへの回帰の中でカシミヤ、重重量のウールなどの生地が主流となっている。
正統で上等なコートいえば、カシミヤのものが定番だが今季押したいのはキャメルだ。
染色が難しくナチュラルな原毛の色は、キャメル色(ラクダ色)と呼ばれるようになった。ちなみに「ラクダの股引」は「ラクダ色の股引」のことである。
今回はロロピアーナのバンチに珍しい濃紺、黒がコレクションされている。
ラクダは寒暖の差の激しい砂漠での生息に耐えるため、多孔質繊維の毛は間に空気を含み、保温性、吸湿性と発散性に優れる。
非常に強靭で弾性があり、長い間、フェルト感を楽しむことができる。よほどのことがない限り、一生買い替える必要はない。
コート素材として申し分ない。
ラクダの毛の生産量は年150万キロと言われる。ウールの0.14%。カシミヤの半分程度。
特に生後半年のラクダから取られる、ベビーキャメルは大変希少で一頭の一生のうち一回しか採取できない。、特に手触りに優れる。
Corvo Nagoya
8F 2-14-16
464-0074 CHIKUSA-KU,NAGOYA SHI AICH-KEN
TEL/FAX 052-898-0974
2017年の新モデルの準備
少々気が早い様だが、2017年の新モデルについて。
新モデルの名前は「駿」(はやお)とした。今回は「男という性」を前面に押し出す。
「莞爾」(かんじ)のピークドラベルとダブルベストというのは、実はいうとフロックコートからきている。
テーラードの原型を踏まえたうえで、新しい組み合わせているので、違和感なく受け入れられることは当然の結果だったと考える。
フロックコートというのは日本人が初めて着た洋装と言われている。現在はその地位をモーニングコートに譲ったが、日本でも明治の初めは昼間の正装として用いられた。
現在では、結婚式の新郎用に白地の生地などで、シングルブレストのフロックコートにシングルのベストというのが主流だ。
「駿」はダブルブレストにダブルのベストというように、より原型に近いものにしたい。
ちなみにダブルブレストはポーランドの騎兵用のコート発祥と言われている。現在のジャケットに近い形になったのは英国王立海軍が海軍服として採用ものといわれている。
どちらも、風が胸元に入らないようにと、釦がはずれても右前でも、左前でも留めることができるようにと、過酷な使用環境において耐えるものとして作られた。機能を重視したデザインとはどうしてこうも美しいのかと思わせる。
発祥から、男性性のセックスアピールには都合が良い
本田宗一郎の名言
「世の中に女性がいなかったら、俺は毛はえ薬を試すことはない、服はドンコロスに穴をあけたもので十分だが、女性がいるからこそ、車も女性に注目されないといけない」
にあやかり「莞爾」「奉文」に続き「駿」はより強いセックスアピールを目的としたデザインとした。
この本田さんの名言は、車を単なる移動の道具と見ることなく、後のウォークマン、アイフォンなどの歴史的な工業製品は機能のみではなくデザインの重要性をうまくあらわしている。
まぁ、スーツなどは「冬寒くて夏は暑い服」なのに男性がそれを纏うとより魅了的に映る、そんな不可思議な力を宿している。
ちなみに「莞爾」のチーフの挿し方がスリーピークスなのはそうしたオマージュを兼ねている。
Corvoの日本国籍を鮮明にするため、羽織に対するオマージュを兼ね、サンプル品は裏地は西陣の絹地とする。
トップ加工と言って原毛の状態で染めで、裏地としても柔らかく、墨画のような陽炎が出るものにした。
期待いただきたい。
セルフイメージ
一度は目にしたことがあるだろう。
1945年8月30日、マッカーサーが専用機DC-54から、厚木飛行場に降り立つシーンは印象的だ。
GHQの司令官として、第一生命会館の執務室から、足かけ7年、日本の占領政策を主導することとなる。
GHQの占領政策、東京裁判には様々な賛否はあるが、このときのマッカーサーの演出は、歴史的に成功したといえる。
神奈川県に在所する厚木基地とは海軍の夜間戦闘機部隊の拠点として機能した。位置的にB29の東京への侵入経路となり、本土防空戦の要となった。基地司令官はポツダム宣言受諾後の8月15日以降も抗戦意志を貫いたが高熱によって倒れ、8月22日に基地の抗戦活動は鎮圧された。
8月30日の時点では、緊迫した情勢の中で抗戦派によっての狙撃の危険性があった。
ここでは詳細は割愛するが、新たな統治者として、弱みを見せれば、後の占領政策に影響があると考え、あえて危険を冒し東京の玄関口の厚木に降り立った。
マッカーサーの服装にも不退転の決意が見て取る。威光を示すがために用いられたのが、コーンパイプだ。
本来、アメリカへの入植者が高価なブライヤー製のパイプの代わりに作られたコーンパイプは、トウモロコシの芯を乾燥させ、使い捨てで安価なものだ。
一部には独特のコーンの香りを好み愛用する方もいるようだが、、マッカーサーのような高い地位の人物が使うものではない。
マッカーサーは服装には比較無頓着だったといわれている。しかしコーンパイプにはこだわった。それは背が高く、非常に印象的である。
これはマッカーサーが陸軍での階級の昇進に合わせ、だんだんと背が高い物を愛用するようになったといわれている。彼はコーンパイプを威光を示すための道具として利用していた。
現在、このような形のコーンパイプはマッカーサータイプと呼ばれている。室内など私的な場ではブライヤ-製のものを愛用したといわれている。
ちなみに有名な正装の昭和天皇とラフなマッカーサーが並んだ写真は威光を示すものではなく単純に彼が服装に無頓着であり、あのような写真となったらしい。マッカーサーは会談後から自身の生命より国民の生活を心配した天皇に対しては非常に敬意を持っていた。
服装は一般に着る人物に似合うということから選択される。
着る人物の演出がしたいセルフイメージから、選択するのもまた違ったファッションの活用法だ。