コルヴォ名古屋・大阪ブログ
ダンディーな男 白州次郎
「日本のプリンシパル」「従順ならざる唯一の日本人」などと謳われる白州次郎ですがファッション界の中でもダンディーな方として有名です。
始めて日本人でジーパンをはいたのは白州とも言われています。
ロンドンに留学を経験し、海外経験がながく西欧のファッションに深く造詣があった方です。
また背広をロンドンのサヴィル・ロー15番地に店を構え、最も古いといわれている老舗テーラー「ヘンリー・プール」で仕立てていたそうです。ちなみこのテーラーには吉田茂元首相も通っていたそうです。またチャーチルもこのテーラーの顧客でした。「和製チャーチル」と渾名された吉田茂とその側近であった白州が顧客とはなんと言うめぐり合わせでしょうか。
ここまでなら単に老舗テーラーの顧客であった人で終わってしまいますが、白州は軒に仕立てあがった背広を吊るしよれよれになってから着たそうです。
彼の言葉に「ツイードのジャケットは軒に2,3年吊るしてから着ろ」というものがあります。
イギリス人は日本人と似た古いものを大事にする心があります。「わび」というものにちかいのでしょうか。父から譲り受けたスーツを一旦、解きそれを子がまた仕立て直し使うイギリスではそれが当たり前なのです。そうした精神を白州さんは理解していたのでしょう。
夏は薄いブルーのシャツ
お客様から透けないシャツをと問い合わせを頂きました。
夏は汗をかくから肌がすけたり、脇汗が染みたりと厄介ですね。
Corvoのお客様は白シャツをご注文される方がほとんどです。ブルーのシャツを勧めてもやんわりと断られます。(笑)
肌が透ける、汗染みが気になる方は色の入ったシャツをお勧めします。
白シャツに慣れてしまうとなんだか柄物、ブルーのシャツには抵抗がありますよね。わたしも二年ぐらい前までは白シャツしか持っていませんでした。だからお客様が抵抗を持つ気持ちが分かります。
そんなときは遠目で白に見える、淡いブルーのシャツはいかがでしょうか?
見た目にも清涼感がで夏にはお勧めです。
オーダースーツはマシン、ハンドどちらが上?
オーダースーツはハンドワーク、マシンメイドなど色々と言われますが追求すべきは体に沿うようなフィット感と美しいシルエットです。
マシンメイドかハンドメイドどちらが優れているのかと言えば一概には言えません。ハンドメイドは手作業ですからズレが生じもしますが職人の手の味とクライアントに対し細やかな対応が可能です。マシンは機械を使い、各所ごとの縫う職人が分業で仕立てますのでズレはほとんど生じません。
ハンドメイドは総合点、マシンメイドは部分点の集合と私は言っています。
ハンドメイドはほとんどを一人で仕上げますので全体のバランスで勝負します。ハンドメイドは一部をみると縫いズレがあったりしますが離れてみてみると全体のバランスは良いです。(一部、分業化している場合もあります。)
マシンはそのパーツ、作業ごとのエキスパートが仕上げます。ですのでフルオーダーの職人よりもその特化された作業は技術的には上なのです。その部分分の作業の集積がスーツとしての最終的な質となるのです。
Corvoの場合は分業化され、職人によってマシン、ハンドの両方を施しています。いいとこ取りをしています。(笑)ですので部分を見てもズレはありませんし全体のバランスは良いです。
しかし、一人の職人の味、感性がいきたフルハンドメイドのスーツはいいものです。機械化が進んでも根強い人気のあるのはそれ故でしょう。
ネクタイにはデインプル
デインプルはえくぼ、くぼみなどの意味を持つ言葉です。
紳士服業界ではネクタイを結ぶ際に入れる皺のことを言います。
今は比較的に一般的で多くの方が入れていますよね。
なぜこのシワを入れるのかはよくわかりませんが入れたらネクタイの形が良くなるとも言います。(あまり、わかっていなくて申し訳ありません)
しかし、ディンプルを作った方がたしかに形がよくなります。襟もとに立体感もでてエレガントに見えます。
また、このディンプルを作りやすいか作りにくいでネクタイの質がわかります。結んだ際に自然にディンプルのでるものはいい芯を使っている証拠です。
ちなみにシワが残るので他店でネクタイを結んでみる場合は店員さんに一言断りを入れましょう。業者の方に以前、私が断りを入れずに結んで注意を受けました。(すみませんでした。)
(現在、Corvoではネクタイは取り扱っていません。)
スーツの地域性
私事なんですが自分は愛知県出身で赤味噌が好きです。(笑)
赤味噌は白味噌に比べ塩分濃度が高といわれています。赤味噌は中京区(豆が原料のもの)、東北区(米が原料のもの)で多く親しまれています。
昔は大阪などの商業の都市にたいし中京区、東北区は農業の地区で農業に従事することから、汗で失われる塩分を補充するために赤味噌が一般的になったと言われています。
鯉こくなども、冬の間、狩猟にでられない内陸部の人がタンパク源としたそうです。
また、京料理の定番の鱧も内陸まで生きたまま輸送に耐える強い生命力をもっていたために京都で食されるようになったそうです。
食文化には昔の人の生活様式、環境によって生まれたものがほとんどです。
今は昔とちがい流通、情報伝達が発達しそうした地域差はなくなりつつあります。しかしそうした地域差は残っています。
スーツにも英国調、カントリー調、ナポリ調、ミラノ風、フィレンツェスタイルなど色々と差があります。いまはかつてほどその特色、違いはなくなりつつるそうですがやはり地域差は残っています。
それは貴族社会、農業社会であったなどの地域性、社会性などに端を発したものがほとんどです。
イタリアはもともと都市国家の集まりで各地独自性が非常に強くその地域によってスーツの形も違います。パスタの形、スパゲッティーの食べ方ですら都市毎に違うとも聞きます。
またイギリスも都市部と郊外は生活様式も全く違い、スーツも生地もまったくちがったものです。
田舎のほうでは狩猟を楽しむために、銃などで狩猟の際にすれを防ぐ胸、肘などに当て布のついたハンティングジャケットなど様々な特徴的なものがあります。
そうした違いを楽しみながらルーツ、歴史背景などを考えながらスーツの形、生地、靴、小物などのコーディネートを選んでみると一層、スーツの楽しみが広がりますね。
本切羽は一つ、二つ外す?
(男の着こなしから)
画像のように袖口を実際に開閉できるようになっている仕様を本切羽、本開きなどといいます。
高級のスーツの場合はこの仕様がなされることが一般的です。
イタリアの医者が人前でジャケットを脱がす、袖をまくり作業ができるようにしたのが始まりだとか、ナポリの仕立屋が凝ったディテールとして施したのが始まりだとかとも言います。
医者の説からドクターカフとも言います。
もともと、袖のボタンはナポレオンがロシア進攻の際、兵士が寒さで鼻を袖ですするのを防ぐためとも言われています。
医者の説とナポレオンの説には説得力が欠けるような気がします。医者がジャケットを人前で脱がないというルールをそこまで厳守する必要があるのか。また、鼻をすする際はボタンのない方ですする気がします。被服の説、由来というのは嘘か本当かのことがたびたびあります。(笑)
実際に袖の釦が開閉ができるからといってスーツの場合、イタリア、イギリスなどでは釦を外すことはないそうです。
また、ジャケットの場合は外そうです。日本人のように右は一つ、左は二つの左右非対称にすることはまれだそうです。
天然素材も万能ではない
高級スーツの芯は通常本バス毛芯、キャメル芯、綿、麻などの天然素材を使います。Corvoのオーダースーツでも同じように天然素材のものを使っています。
当然、海外ブランドの数十万するスーツには当然こうしたものが使われています。
19800円などの格安スーツにはポリエステルの代用品が使われています。
高いスーツが型崩れしにくいといわれるのは芯の違いが大きいです。(生地にも仕立てにもよりますが)
しかし、天然素材というのは万能ではありません。
本バス芯には馬の尻尾を使っています、また麻芯は麻です。当然予防策は取っているのですが、これらの素材は繊維が堅くときどき表地から出て来ることがあります。
パンツのベルトを締める位置には芯が入っていますが、Corvoでは敢えてポリエステルの芯を使っています。それは麻芯を以前、縫製工場では使っていたのですがチクチクするとクレームが殺到したからです。
縫製工場の社長と副社長が
今日、Corvoに縫製工場の社長と副社長がやってきました。
平日はゆっくりしていて来訪の方が来られると嬉しいものです。(笑)またいつも電話でのやりとりはしているのですがこうしてお会いするのは半年ぶりぐらいで色々とお話しさせていただきました。
「ブログがいいですね」と社長と副社長に褒められました。「服飾評論家として食べていけるレベルの知識量」と言われましたがお客様とおしゃべりながら一緒にスーツ選びをしていることが好きなので店舗にいつづけますよ。(笑)「ブログのキャラと実物の風体とキャラが違いすぎる」と副社長に言われてしまいました。お会いしたお客様にそんなこと言われたないのに…スーツも好きですが、それより人と話すことが好きなのでこの商売は自分にとって天職のように思えます。
今後のCorvoの方向性についてお話しさせていただきました。
Corvoのオーダースーツは何度もブログで紹介させていただいているように通常20万円以上、Corvoで10万円前後のものなら百貨店、高級ブランドなら50万、70万もしてしまうようなハイクオリティーの物をご提供しています。
仕立ての面でも生地、素材にこだわるのはもちろんのこと、ヨーロッパの一流ファクトリーに一歩も引けを取らない、むしろそれを超える技術力を持つ国内最高峰の縫製工場でお仕立てしています。
そうしたビジネスパートナーに巡り合えたこに感謝をしつつより多くのお客様にスーツを購入いただけるようにと、その高品質のスーツを単に値段の面で消費者の方々にアプローチするのではなく、その価格を遥かに超えた質の面を消費者の方々にご理解いただけるようどう提案するのかお話しさせていただきました。
高品質のオーダースーツをこれからも現在の顧客様、新たなるお客様にご提供できるようにCorvo、縫製工場、生地問屋、関係各位ともども邁進していきますので今後ともよろしくお願いいたします。
ディテールではスーツの良し悪しを測れない
「よいスーは?」ツという問いにたいし、案外、ファッション雑誌編集者、このアパレル業界に身をおく方でも意外にもほとんど明確に説明できる方はいません。
ボタンが水牛、袖が切羽、襟ひげがあるなどディテールに関してはいえる方は多いですがあくまでディテールは細部の問題でスーツの構造上の良し悪しの本質をついていません。
海外の最高級ブランドはこうしたディテールは施されていることが多いですが、日本人が気にする台場、襟ひげなどのディテールが施されていない場合も多いです。
日本ではファッション雑誌などの宣伝媒体が発達しているので多くの方々こうしたディテールに知識があります。また、雑誌はブランドの宣伝媒体ですからポジショントークになるのはいたし方ありませんね。
Corvoでは水牛釦、切羽、台場、襟ひげなどのディテールは施されていますから、ディテールが凝っているから良いスーツと言っていればいいのですが、それではお客様に対して正直ではありません。(笑)
本来、スーツと言うのはそのシンプルなデザインにシルエットの美しさを楽しむものですからディテールはあくまでもちょっとした付加価値とお考えください。
英国生地への移行
日本ではまだまだイタリア生地が主流ですね。
しかし、最近は雑誌などの宣伝媒体のブリティッシュ押しの影響でテーラー、オーダースーツ店でもイギリス生地の品揃えが徐々に増えてきました。また、イタリアの生地ブランドでも堅く、ハリがある英国生地に近いものも出てきています。
日本では光沢のある生地が人気です。
多くのテーラー、セレクトショップ、オーダースーツ店で取り扱いのあるゼニア、ロロ・ピアーナ、カノニコ等の高級イタリア生地は光沢が強いです。ですから良い生地=光沢の強い生地と認識されているようですね。
2、3年前から英国調のチョークストライプ、ペンシルストライプなどの柄のイタリア生地で仕立てたスーツがセレクトショップに多く吊るされています。最近では英国生地へと移行しているようですね。とはいってもまだまだ柔らかさを残したイタリア生地よりの英国生地が多いように感じます。
英国生地の重みとハリのある感触は夏物より冬物のほうがその特性を楽しめます。気が早いようですが私も来季、一着仕立てようと思っています。