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コルヴォ名古屋・大阪ブログ

古い型と伝統的な型

 オーダースーツを作られる上で生地や縫製も大事ですが型、シルエットも重要で欠かせませんね。
 
 Corvoの型紙は正統派で古いといえば古い型です。
 
 具体的にどういった型が古く、どういった型が新しいのかについて説明します。
 
 まずはアパレル界(スーツ業界)に置ける古いの定義と伝統的(正統派)の違いを説明しなくてはなりません。
 
 アパレルの古いのは流行に遅れたもののことを指します。
 
 たとえばバブル期の大き目で肩幅の大きいジャケットは当時は流行の最先端でした。最近では三つ釦の、タイト目で着丈の短く襟巾の細いスーツ。アパレル界では流行に乗ったものを今日的といいます。
 
 流行に乗ったものは当然、流行り廃りがあります。現在、バブル期のようなスーツを着た方はほとんどいませんよね。
 
 細い襟巾も現在はだいぶ少なくなってきましたね。一時期はホストのようなスーツをビジネスマンが着てましたね。
 
 多少は時代ごとに変化はありますが伝統的とは古くからある、正統な物を指します。(伝統は時代の連続の中で存在しますから、時代の影響は受けます。)
 
 イタリアのスーツというのは(特に南部)、ブリティッシュの老舗テーラー、老舗ブランドスーツの型というのはあまり変化がありません。
 
 たとえば五十年近く前に公開されたゴッドファーザーの登場人物のスーツは現在の感覚で見てみても廃れ、古臭いという印象を覚える方はごく少数だと思います。
 
 
 
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 ゴッドファーザーはイタリアのシチリアのマフィアの話で登場人物の大半が南部イタリアの伝統的な形のスーツを着ていて、今なおスーツ好きの方には高い人気があります。
 
 今の流行は伝統的スタイルに集約しつつあるようです。数年前までのカジュアル化に対する大きな反発のようにも感じます。
 
 ちなみにアパレル界は高価格帯のブランドになればなるほど型も伝統的になる傾向にあります。それは買い替えが安価の物より容易ではないので長く使えるようにという意味合いがあるようです。
 
 また不景気になると使い回しの利く伝統的な型、色合いの被服が売れるようになるそうです。現在のスーツの伝統回帰もそのような事情があるかもしれませんね。
 
 特に女性服にその傾向が強いようです。女性服は流行が紳士服より大きく、一着あたりに縫製にお金を掛けるより一着当たりの単価を抑え数を買ってもらう意味合いがあるようです。
 
 デザインブランドのスーツもその傾向がありますね。アルマーニ、ボスなどの二十万前後のスーツと老舗テーラーのスーツとの縫製は雲泥の差があります。

ネクタイについて

 少し前まで細いナロータイがトレンドでしたね。それに併せて襟巾の細いスーツ、襟の小さいシャツが多く見受けられました。
 
 ネクタイの幅は7~9cmが一般的でそれよりも細い物をナロータイといいます。
 
 ネクタイを選ぶ際はジャケットの襟の大きさに合わせるとおさまりがよくなります。細い襟の物にはナロータイ、巾広の物には一般的なもの、太めの物がよくあいます。
 
 最近のトレンドは巾広の襟のジャケット、スーツ、襟の大き目のシャツですからネクタイも太くなっていますね。
 
 ちなみにナロータイは顔が小さい方でないと顔が大きく見えるので注意が必要です。(笑)
 
 ところでネクタイの起源を御存知ですか?
 
 クロアチアの兵士が首に巻いていたスカーフが起源という説が一般的ですね。彼らの恋人、妻、家族が無事を祈って贈ったといわれています。また、兵士がスカーフを巻くスタイルも広く一般的になり第一次世界大戦までそのスタイルは広く継承されます。
 
 もとは兵装ですから部隊の柄によって識別に使われ、今でも柄によって帰属す組織、集団(会社、スポーツの選手団、サークルなど)を表すこともあります。
 
 今のような形のネクタイになったのは19世紀頃のイギリスと言われています。

オーダースーツを知る~ポケット位置~

 胸ポッケト位置なんですが、5,6年前のスーツに比べ下がってきています。
 
 詳しい方なら、その当時はクラシコイタリア全盛で低くても良いような気がするでしょう。
 
 もともと、イタリアのスーツはイギリスのものより2,3cm低めの場合が多いです。 イタリア人はチーフを挿す際に2,3cm、イギリス人より多めに出すからとも聞いたことがありますが低めです。
 
 ポケット位置は着丈を基準に三等分した位置にそれぞれ胸ポケット、腰ポケットとなります。それより高い位置にあれば高めといいます。
 
 なぜ5,6年前のスーツはポケット位置が高かったと言いますと三つボタンのスーツが全盛でした。
 
 ボタンをかける位置が高かったので重心を高めにするためにバランスをあわせるために高めに設定されていました。

オーダースーツの流行~着丈~

 世界的に見ても現在は着丈は短めのものが流行だとのこと。
 
 細い襟と短い丈、細身のパンツは以前のスーツのトレンドでしたが襟巾太目、太目のパンツが今のトレンドになりつつあるようです。
 
 一般にブリティッシュ調のスーツは長いと言われますが、様々なスーツを見てきましたが個人的は国ごとによって違いはないように感じました。1930年代は短めのものがイギリスで流行したそうですから、時代によるところが大きいと感じます。
 
 着丈の基準はお尻が隠れる程度、第七頚椎(背中側の首の付け根の骨)からかかとまでの半分、(身長-24cm)÷2、親指の第一関節付近と言われたりもします。
 
 ちなみに私は胴長なので基準どおりに作るとお尻が丸出しになってしまいます。(笑)実際には個人の体型と全体のバランスを元に決めるのが良いでしょう。
 
 バランスをつかむコツは鏡から4メートルほど離れてみると良いでしょう。あまり近くで見ていると全体のバランスをつかめません。
 
 服飾評論家の落合正勝氏は重めの生地のほうが長めの丈があうともおっしゃっていました。また、恰幅のいい方は長め、細身の方は短めがバランスがいい気がします。

Corvoのオーダースーツの型の特徴

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 格好いいでしょう?(笑)型紙を引いたのは自分ではありませんがお客様に自信をもってお勧めできるシルエットです。
 
 Corvoの型紙は十年近く前にクラシコイタリアのスーツを縫製工場のパタンナーの方々が研究を重ね作られたものなんです。時には市価、数十万円もするようなスーツをばらしたりしながら。
 
 クラシコイタリアは長い期間を経て成熟した、伝統的イタリアスタイルなので現在の感覚で見ても古さを感じさせません。
 
 イタリアを代表するブランドもおおよそこの形を継承しています。
 
 主な特徴としては高いゴージ、広い襟巾、高い位置の自然な腰の絞りです。型を口頭、文字で表現するなんて野暮ですね。「見て感じてください!」(笑)
 
 また、腰の絞りはお客様の体型、要望で変更させていただきます。最近は少しシワが出るぐらいの絞り目が流行です。それもブリティッシュ調の流れからでしょう。
 

 

 細々したところでは袖先から4センチのところに第一釦があります。イタリアのスーツはイギリスのスーツに比べ袖先から離れた場所に釦が付くそうです。理由は分かりません。
 
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super表記と生地の質

 生地を見ているとsuper100(スーパー100)と言う表記を目にしたりしますよね。
 
 これは原毛の細さを表します。
 
 Super100なら18.5ミクロンで、10表記があがると0.5ミクロンづつ細くなります。
 
 例えばsuper120なら1ミクロン細い17.5ミクロンと言う意味です。
 
 一般に原毛が細いと高品質といわれています。
 
 オーストラリア産の原毛の平均が24ミクロンと言われています。また、全世界の羊毛の生産量のsuper120以上のものが5パーセント未満と言われています。細くなればなるほど希少な素材と言うことです。
 
 あくまでもsuper表記で知ることができるのはあくまでも原毛の質で生地の質ではありません。
 
 細い原毛であっても生地に使う量を減らすには打ち込みを甘くすればいいのです。(打ち込みが甘い=単位面積当たりの糸の本数がすくない)
 
 同じ生地ブランドで値段が同じでもsuper表記が違う場合が多々あります。それは加工の違いもありますが、使用する原毛の量の違いが大きいです。
 
 中にはsuper80前後の最高級生地もありますので一概にsuper表記が低いからと言って悪い生地とはいえません。逆も然りです。

オーダースーツを知った玄人好みの生地(タリア・デェルフィノ)

 知名度がなくとも質が高い生地はたくさんありますよ。
 
 例えばイタリアのミルブランドのタリア。デェルフィノです。
 
 Corvoでは人気が高い生地ですが、他のオーダースーツ店では知名度がないせいもあって余り人気はないそうです。
 
 ちなみにビームスかユナイテッドアローズかでこの生地を使った既製のスーツが売られていました。セレクトショップは専属の企画部があるのでなかなか、流石によい生地のチョイスだと感心しています。(上から目線ですいません)
 
 タリア・デェルフィノはビエラ地方で1903年創業の老舗です。
 
 ミルとしての技術は業界の中でも定評があり最高品質の生地のみを作ります。とくにプレタ(既製服)ブランドからの評価が高く、ブリオーニ、キートンなどの一流ブランドに生地を提供しています。
 
 近年ではリネン素材、コットン素材などの多彩な生地を提案しています。
 
 素人受けするものというよりも玄人好みの生地です。
 
 柄も定番のものから、捻りの入ったものも多く、価格も品質に対して非常にいいので私自身も特に気に入っている生地ブランドです。

オーダースーツ業界に対する愚痴

 愚痴っぽくなるのですが、この業界は業界人でさえ先入観でスーツの仕立てを語ることがままあります。仕立てにほとんど理解が及んでいないのが実情でしょう。
 
 アパレル業界は値段があってないようなものでブランド品、百貨店で売られていたからといって品質を保証するものではありません。
 
 業界の方でCorvoのスーツを見てパターンオーダーの場合は袖を後でつけるところがあまり多くないので、ねじれがでているところが多いとの先入観でねじれているとと指摘されたことがあります。(苦笑)Corvoの場合は後付けですので、人の手による作業ですのでごく微量のずれは出ますがねじれはでないのに。
 
 オーダースーツ業界の方でも仕立てについてわかっていないなんて。それで「いいのか」と思うことがままあります。
 
 一般にパターンオーダーは機械で裁断するため、特にチェックの場合、柄がずれることがあります。業界の方にもCorvoのスーツを見てズレていると指摘されました。
 
 Corvoの場合は手裁断によって職人が丁寧に柄を合せていますので寸法の関係で多少の柄がずれることはありますがミリ単位に抑えています。
 
 いいことばかり言っていてはいけませんね。Corvoのスーツにも弱点はあります。接着芯を使用してないので一般的なパターンオーダースーツに比べ雨が降るとシワが出やすい。また、天然素材を使用しているので稀に表地から飛び出すことがあります。
 
 また、納期も手作業、またインポート生地の水分量の安定などで一か月前後かかってしまいます。
 
 販売員の方でも毛芯について存知ていない方がおおいのもこの業界です。
 
 「通常、夏物には毛芯は入っていないですよ」といわれたことがあります。さわって見てどう考えているのに毛芯が入っているのに。
 
 この業界の問題は仕立てを理解していない経営陣が縫製賃の安い工場に仕事をまわし、仕立てにこだわったスーツがどんどん廃れていきます。
 
 やはり仕立てにこだわるとコストはかかります。しかし、それには当然、付加価値はあります。
 
 当然、安さを追求することも一つの別の消費者の方にとっての価値です。(我々の業界は安価なものを売るブランド、店をつい否定しがちですが、それも一つの価値と私は思っています。)
 
 お客様も高い買い物をするのにろくに安い商品との違い、付加価値を説明もできない販売員を信用できませんよね。
 
 また生地もブランド名だけで大した質もないブランドが蔓延っていますね。そんなにブランドにお金をかけなくてもいい生地はあるのに。
 
 高価なものが売れない時代といいますがオーダースーツ業界に限っては売り出す側の勉強不足のように思えてなりません。業界に身を置く一人として私自身もお客様の立場にたち身の振り方を考えなくてはなりませんね。

一流の海外スーツブランドとくらべCorvoのスーツの縫製技術は?

 Corvoの縫製は海外スーツブランドにくらべどうなのか紹介させていただきます。
 
 Corvoのスーツは生まれはイタリアの一流ブランドのスーツを参考に世界的に見てもトップ水準の日本の国内最高峰の縫製技術をもってクラシコイタリアのスーツをモデルに作ろうとしたのが始まりです。ここで紹介するブランドはいわばCorvoの師匠でもありました。(笑)
 
 まずはキートンです。
 
 1969年創業のイタリア南部ナポリのブランドでもともとフルオーダースーツ職人が集まり、既製のスーツブランドとして始まった、技術集団を擁する一流ブランドです。
 
 手作業を随所に施し、いかにもナポリらしい柔らかいスーツを仕立てます。
 
 また、「クラシコイタリア協会」に加盟しており日本でクラシコイタリアとしてイメージされるスーツはキートンのものが多いです。
 
 次はブリオーニです。
 
 1945年創業のイタリアを代表する最高級ブランドです。
 
 こちらも手作業を随所に施し、アイロンワークを施した美しいシルエットのスーツを提供することで各国の富裕層の間で人気を博しています。
 
 イギリスのスパイ、「007」の主人公がブリオーニのスーツを着ていたことで話題になりました。現在もブリオーニのスーツです。
 
 2002年には「クラシコイタリア協会」を脱退したものの仕立てにこだわったイタリア調のスーツを現在も提供しています。
 
 どちらのブランドもスーツの価格で50万円以上してしまいます。
 
 百貨店ならCorvoと同じ縫製でも20万円そこそこで売っています。
 
 実はCorvoのスーツはこれらのブランドスーツと同等以上の仕立てなんですよ。毛芯、たれ綿などの素材はもちろんそれらのブランドと同等品質のものです。むしろ、うちのほうがいいかもしれません。縫製に関しても全く遜色がなく、日本の縫製というのはそれぐらいのレベルの高いものなんですよ。(笑)

オーダースーツを取り巻く環境(イギリスにマーチャント、イタリアにミルが多い理由)

 先日、生地屋の方から教えていた薀蓄を披露させていただきます。
 
 生地屋には卸問屋、織元、企画屋など「生地屋」と一言に言っても色々とあります。
 
 特に生地の生産を行うところを織元、ミルといいます。
 
 企画、生地のデザインをしそれを織元に織らせて自ブランド、他ブランドの生地名で市場にだす、企画屋をマーチャントと言います。
 
 私のようなオーダースーツ店はそうして企画、生産された生地を市場にだす流通を担当する生地問屋さんと直接、生地の仕入れをお願いします。
 
 中にはロロ・ピアーナ、ゼニア、スキャバルのように大資本をもとに同一法人で生産、企画、流通までも担当する生地会社もあります。そうしたところは全体から見れば稀です
 
 イタリアの生地ブランドはミルが多く、イギリスはマーチャントが多いのはよく雑誌に載っていてご存知の方も多いかと思います。
 
 「なぜ、そうなったのか?」というともともと、イタリアはイギリス、フランスなどのブランド品の下請けとしての性質が非常に強かったそうです。仕事を請け負ううちに縫製工場、生地の織元などの生産の効率化、資本の集中が起こり町工場単位のものがだんだん、集積していき大規模工場へと産業体制が変化していったそうです。
 
 その結果、企画、生産、問屋との交渉を行うミルが多くなったそうです。
 
 一方、イギリスは資本投下が行われず生産効率の悪い町工場単位のものが多く、企画を行うまでの体力がなく、一括して原毛の仕入れ、生地のデザイン、問屋との交渉を行うマーチャントが多いと言うわけだそうです。
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